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(新着論文)ヨガの過敏性腸症候群への効果: 系統的レビュー
原題: The Effectiveness of Yoga for Irritable Bowel Syndrome: A Systematic Review.
Pavan F, Yadav SS, Costantino A, Dell’Era A, Mastroianni M, Buoli M / Comprehensive Physiology / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
過敏性腸症候群(IBS)は、再発性の腹痛と腸の動きの不調を特徴とする一般的な機能性消化管障害で、世界人口の5%から10%に影響を及ぼします。多くの患者は従来の治療で症状が完全に寛解しません。最近、ヨガがIBSを含む様々な医療状態において有益な効果を示すことが報告されています。本系統的レビューでは、IBS管理におけるヨガの有効性を評価しました。PubMedとScopusを用いて2025年3月までの文献を包括的に検索し、ヨガのポーズ、プラーナーヤーマ、瞑想に関する研究を特定しました。レビュー、症例報告、年齢やデザイン基準を満たさない研究を除外し、10件の研究を含めました。これらは方法論の質を評価し、ランダム化比較試験(RCT)または非対照試験として分類しました。消化器症状、生活の質、心理的症状に関連する結果を分析し、実施されたヨガの種類を検討しました。ヨガ介入は、通常のケアや待機リスト対照と比較して、消化器症状の改善、不安や抑うつの軽減、生活の質の向上をもたらしました。特に、IBS症状重症度スケールのスコア変化を主要なアウトカムとした研究では、対照と比較してヨガが中程度から大きな効果を示しました(Cohen’s d範囲: 0.37-3.60)。これらの予備的な結果は、ヨガがIBSの身体的および心理的側面に好影響を与える可能性を示唆していますが、レビューで報告された結果を確認するためには、高品質で大規模なサンプルの研究が必要です。
PICO:
- P(対象): 過敏性腸症候群(IBS)患者
- I(介入): ヨガ(ヨガのポーズ、プラーナーヤーマ、瞑想)
- C(比較): 通常のケアまたは待機リスト対照
- O(結果): 消化器症状の改善、不安や抑うつの軽減、生活の質の向上
一言: 過敏性腸症候群(IBS)は、世界人口の5%から10%に影響を及ぼす一般的な機能性消化管障害です。従来の治療で症状が完全に寛解しない患者も多く、ヨガが腸-脳軸に作用することでIBSに有益な効果を示す可能性があります。
エビデンスレベル: 7/10
評価理由: ヨガがIBSの症状改善に有効であることを示す中程度から大きな効果が報告されていますが、さらなる大規模な研究が必要です。現時点では予備的な結果として捉えるべきです。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
過敏性腸症候群(IBS)は、患者の生活の質に大きな影響を与える慢性疾患です。従来の治療法では症状が完全に寛解しないケースが多く、代替療法としてのヨガが注目されています。本レビューでは、ヨガがIBSの身体的および心理的症状に対して有益な効果を示す可能性があることが示唆されています。特に、ヨガは腸-脳軸に作用し、消化器症状の改善や不安・抑うつの軽減に寄与することが期待されます。しかし、これらの結果は予備的なものであり、さらなる大規模で高品質な研究が必要です。日本の臨床現場においても、ヨガをIBSの補完的な治療法として検討する価値がありますが、患者の個別性を考慮し、医療専門家の指導のもとで実施することが重要です。また、ヨガの種類や頻度、患者の状態に応じた適切なプログラムの選定が求められます。外的妥当性を考慮し、他の文化圏での研究結果をそのまま適用するのではなく、日本の患者に適した方法を模索することが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. ヨガはIBSの治療にどのように役立ちますか?
A. ヨガは腸-脳軸に作用し、消化器症状の改善や不安・抑うつの軽減に寄与することが期待されています。特に、ヨガのポーズや呼吸法、瞑想がIBSの症状を緩和する可能性があります。
Q. ヨガをIBSの治療に取り入れる際の注意点は?
A. ヨガを取り入れる際は、患者の個別性を考慮し、医療専門家の指導のもとで実施することが重要です。また、ヨガの種類や頻度、患者の状態に応じた適切なプログラムの選定が求められます。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
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