最新の研究から、外来の皆さまに役立つ知見を簡潔にご紹介します。
(新着論文)不妊症の男女で異なるストレスの違いを探る
原題: Is stress different in infertile women and men? A systematic review and meta-analysis.
Simbar M, Rashidi F, Taherian R, Ghasemi V, Kalhor M, Kiani Z / BMC public health / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
本研究は、不妊症の男女間でのストレスの違いを調査するために、系統的レビューとメタ解析を行いました。2024年8月20日までに、PubMed、Web of Science、Scopus、Google Scholarを用いて、キーワード「不妊症」と「ストレス」で文献検索を行いました。重複を除去し、事前に定義した基準に基づいて選別しました。質の評価はJoanna Briggs Instituteの基準を用い、STATA 18.0で解析を行いました。53の研究が含まれ、合計21,355人(男性12,913人、女性8,442人)が対象となりました。使用された質問票には、FPI、PPS、PSQ、COMPI、DASS、TTS、IRSSなどが含まれます。メタ解析にはFPIのデータが使用され、男女間の総ストレススコアの差は0.33(95%CI: 0.23-0.44, P<0.001)で、女性のストレスが男性より高いことが示されました。社会的関心、性的関心、親になることへの欲求の各次元でも有意な差が見られました。これらの結果から、不妊症のカップルに対するストレス評価とカウンセリングの重要性が示唆されました。
PICO:
- P(対象): 不妊症の男女
- I(介入): ストレス評価
- C(比較): 男女間のストレスの違い
- O(結果): 女性のストレスが男性より高い
一言: 不妊症の男女間でストレスの違いがあることが示されました。本研究は、男女のストレスの違いを系統的にレビューし、メタ解析を行いました。結果、女性のストレスが男性より高いことが明らかになり、カップルのストレス評価と適切なカウンセリングが重要であると示唆されました。
エビデンスレベル: 8/10
評価理由: 本研究は53の研究を対象とした系統的レビューとメタ解析であり、信頼性の高いデータを提供しています。結果は統計的に有意であり、臨床的な意義も大きいと考えられます。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
本研究は、不妊症の男女間でのストレスの違いを明らかにし、特に女性のストレスが高いことを示しています。日本の臨床現場でも、不妊治療を受けるカップルに対して、ストレス評価を行い、適切なカウンセリングを提供することが重要です。特に、社会的関心や性的関心、親になることへの欲求に関連するストレスが高いことから、これらの側面に焦点を当てた支援が求められます。また、文化的背景を考慮したアプローチが必要であり、日本の文化に適したストレス管理プログラムの開発と実施が望まれます。さらに、ストレスが不妊治療の成功率に影響を与える可能性があるため、ストレス管理は治療の一環として考慮されるべきです。
(FAQ)
Q. 不妊症の女性は男性よりもストレスが高いのですか?
A. はい、本研究によれば、不妊症の女性は男性よりも高いストレスを経験していることが示されています。特に、社会的関心や性的関心、親になることへの欲求に関連するストレスが高いとされています。
Q. 不妊症のカップルに対するストレス管理はどのように行うべきですか?
A. ストレス管理には、標準化された評価ツールを用いたストレス評価が重要です。その上で、カップルのニーズに応じたカウンセリングやサポートを提供し、文化的背景を考慮したプログラムを実施することが推奨されます。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
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