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(新着論文)子どもと若者のうつ病・不安に対するモバイルCBTの効果
原題: Effectiveness of Mobile-Based Cognitive Behavioural Therapy for Depression and Anxiety in Children and Young People: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials.
Qiaochu Z, Yahui W / Clinical psychology & psychotherapy / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
モバイルベースの認知行動療法(CBT)は、子どもと若者のうつ病や不安に対する有望なデジタル介入法として注目されています。本系統的レビューは、この集団に対するモバイルCBTの効果と実現可能性を評価することを目的としました。5歳から25歳までの子どもと若者を対象に、モバイルCBT介入のランダム化比較試験(RCT)を6つの電子データベースで系統的に検索しました。主要なアウトカムは、不安とうつ病の症状の変化でした。合計9件のRCT(参加者数2479名)が含まれました。対照条件と比較して、うつ病のアウトカムを検討した8件中7件(87.5%)でうつ病症状の有意な減少が示されましたが、不安症状の減少に関する証拠は限られており、6件中2件(33.3%)のみが有意な効果を示しました。モバイルCBTアプリの実現可能性は中程度から高いと評価されました。モバイルで提供されるCBTは、子どもと若者のうつ病症状の治療において有望な効果を示していますが、不安治療に関する証拠は依然として限られています。これらのアクセスしやすい介入は、特に資源が限られた環境での子どもと若者のメンタルヘルスサービスの提供における現在のギャップを埋めるのに役立つ可能性があります。
PICO:
- P(対象): 5歳から25歳の不安またはうつ病症状を持つ子どもと若者
- I(介入): モバイルベースの認知行動療法(CBT)
- C(比較): 通常のケアまたは他の対照条件
- O(結果): 不安とうつ病症状の変化
一言: モバイルベースの認知行動療法(CBT)は、子どもと若者のうつ病に対して有望なデジタル介入法として注目されています。本研究は、モバイルCBTの効果と実現可能性を評価し、特にうつ病症状の改善において有効性が示されましたが、不安症状への効果は限定的でした。
確かさ(GRADE): 中等度
理由: 研究数は多いものの、不安症状に対する効果の証拠が限られているため、全体の確信度は中程度です。うつ病症状に対する効果は比較的一貫しています。
研究の信頼性(RoB 2(ランダム化試験)): やや懸念
- 参加者の割付方法: 低い(大きな問題なし)
- 予定した介入からのずれ: やや懸念
- アウトカムの欠測: 低い(大きな問題なし)
- 結果の測り方: やや懸念
- 報告された結果の選び方: 低い(大きな問題なし)
解説: この研究はランダム化比較試験に基づいており、うつ病症状に対する効果は比較的一貫していますが、不安症状に対する効果は限定的です。したがって、結果には一定の信頼性がありますが、さらなる研究が必要です。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
モバイルベースの認知行動療法(CBT)は、特にうつ病症状の改善において有望な結果を示しています。これは、特に医療資源が限られた地域でのメンタルヘルスケアのギャップを埋める手段として有用です。しかし、不安症状に対する効果は限定的であり、さらなる研究が必要です。日本の臨床現場においても、モバイルCBTはアクセスしやすい介入法としての可能性がありますが、個々の患者の状況に応じた適切な評価と組み合わせることが重要です。特に、若者のメンタルヘルスケアにおいては、家族や学校との連携も考慮する必要があります。また、デジタルデバイスの使用に関する倫理的配慮やプライバシーの保護も重要です。日本のガイドラインに基づいた適切な使用が求められます。
(FAQ)
Q. モバイルCBTはどのようにしてうつ病に効果がありますか?
A. モバイルCBTは、認知行動療法の原理をデジタルプラットフォームで提供し、患者が自分のペースで学習し、実践できるようにします。これにより、うつ病の症状を軽減することが期待されます。日本の精神科ガイドラインでは、CBTはうつ病治療の一つとして推奨されていますが、個々の患者に合わせた適用が重要です。
Q. モバイルCBTは不安症状にも効果がありますか?
A. モバイルCBTは不安症状に対しても一定の効果が期待されますが、現時点では証拠が限定的です。日本の臨床ガイドラインでは、CBTは不安障害の治療に有効とされていますが、モバイル形式での効果はさらなる研究が必要です。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
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