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(新着論文)ブレクスピプラゾールの統合失調症と物質使用障害併存症への効果

原題: Brexpiprazole for the Treatment of Co-occurring Schizophrenia and Substance Use Disorder: A Multisite, Randomized, Controlled Trial.
Fan X, Freudenreich O, Jarskog LF, McEvoy J, Harrington A / The Journal of clinical psychiatry / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:

この研究は、統合失調症と物質使用障害を併発する患者に対するブレクスピプラゾールの効果を検討しました。12週間の試験で、患者は現在の抗精神病薬からブレクスピプラゾール(最大4mg/日)に切り替えるか、従来の治療を継続するかにランダムに割り当てられました。物質使用は使用日数と費用で評価され、渇望は視覚アナログ尺度で評価されました。生活の質はHeinrichs-Carpenter QOLスケールで評価され、精神症状はPANSSとCGI-Severityで評価されました。結果として、ブレクスピプラゾール群は物質使用日数と費用の減少傾向を示しましたが、統計的有意性はありませんでした。しかし、生活の質の向上は統計的に有意でした。この研究は、ブレクスピプラゾールが物質使用の減少と生活の質の向上に寄与する可能性を示唆しています。

PICO:

  • P(対象): 統合失調症と物質使用障害を併発する患者
  • I(介入): ブレクスピプラゾール(最大4mg/日)への切り替え
  • C(比較): 従来の抗精神病薬治療の継続
  • O(結果): 物質使用の減少、生活の質の向上、精神症状の改善

一言: 本研究は、統合失調症と物質使用障害を併発する患者におけるブレクスピプラゾールの効果を検討しました。12週間の試験で、物質使用の減少と生活の質の向上が示唆されましたが、統計的有意性は限定的でした。

エビデンスレベル: 6/10

評価理由: この研究はランダム化比較試験であり、一定の信頼性がありますが、統計的有意性が限定的であるため、効果の確実性には注意が必要です。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

ブレクスピプラゾールは、統合失調症と物質使用障害を併発する患者に対して、物質使用の減少と生活の質の向上に寄与する可能性があります。しかし、統計的有意性が限定的であるため、臨床での適用には慎重な判断が求められます。日本の臨床現場では、ブレクスピプラゾールは既に統合失調症の治療薬として使用されていますが、物質使用障害への効果についてはさらなる研究が必要です。患者の個別の状況に応じた治療計画が重要であり、他の治療法との併用も検討されるべきです。また、副作用や長期的な効果についても注意深く観察する必要があります。

(FAQ)

Q. ブレクスピプラゾールはどのような患者に適していますか?
A. ブレクスピプラゾールは、統合失調症と物質使用障害を併発する患者に対して、物質使用の減少と生活の質の向上を目指して使用される可能性があります。ただし、現在のところ物質使用障害に関しては適応外であることに注意が必要です。

Q. この研究の結果はどの程度信頼できますか?
A. この研究はランダム化比較試験であり、一定の信頼性がありますが、統計的有意性が限定的であるため、結果の解釈には慎重さが求められます。

Q. 日本でのブレクスピプラゾールの使用状況は?
A. 日本では、ブレクスピプラゾールは統合失調症の治療薬として使用されていますが、物質使用障害への効果についてはさらなる研究が必要です。本研究ではブレクスピプラゾールを最大4mgまで使用していますが、日本ではブレクスピプラゾールの最大用量が2mgであることにも注意が必要です。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料