最新の研究から、外来の皆さまに役立つ知見を簡潔にご紹介します。
(新着論文)親知らず抜歯時の不安軽減におけるVRの効果
原題: Effectiveness of virtual reality in reducing patient anxiety before and after the extraction of third molars under local anaesthesia: a randomised study.
Baras R, Hajji F, Godaert L, Cailliau E, Poisson M / Swiss dental journal / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
歯科治療に関連する不安は広く見られ、局所麻酔の失敗要因として重要です。この不安を効果的に管理することが手技の成功に不可欠です。VRは最近、医療分野で不安軽減の新しい非薬理学的手段として注目されています。本研究は、局所麻酔下での親知らず抜歯時におけるVRの有用性を評価することを目的としました。単一施設での前向き無作為化比較試験で、VR群と対照群の2群に分けられました。主要評価項目は、10点満点のスケールでVR群と対照群の間に少なくとも1.5点の差を示すことでした。105名の患者が参加し、対照群53名、介入群52名でした。統計的には、術前と術後の不安の平均変化について、介入群と対照群の間に有意差は認められませんでした(介入群 -1.8 ± 3.5、対照群 -1.6 ± 4.1、P = 0.75)。親知らず抜歯時の不安軽減におけるVRの効果を明確にするためには、さらなる研究が必要です。
PICO:
- P(対象): 局所麻酔下で親知らずを抜歯する患者
- I(介入): バーチャルリアリティ(VR)を使用
- C(比較): 通常のケア(VR未使用)
- O(結果): 術前後の不安の変化(10点スケールで評価)
一言: 歯科治療に関連する不安は局所麻酔の失敗要因となり得ます。本研究では、親知らず抜歯時の不安軽減におけるVRの効果を検討しましたが、VR使用群と対照群で有意差は認められませんでした。さらなる研究が必要です。
確かさ(GRADE): 中等度
理由: 本研究はランダム化比較試験であり、方法論的に信頼性がありますが、結果に有意差が見られなかったため、さらなる研究が必要です。
研究の信頼性(RoB 2): 低い(大きな問題なし)
- 参加者の割付方法: 低い(大きな問題なし)
- 予定した介入からのずれ: 低い(大きな問題なし)
- アウトカムの欠測: 低い(大きな問題なし)
- 結果の測り方: 低い(大きな問題なし)
- 報告された結果の選び方: 低い(大きな問題なし)
解説: この研究はランダム化されており、バイアスのリスクは低いと評価されています。結果は信頼できるものですが、さらなる研究が必要です。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
本研究は、局所麻酔下での親知らず抜歯時における不安軽減のためのVRの効果を検討しましたが、VR使用群と対照群で有意差は認められませんでした。VRは非薬理学的手段として注目されていますが、現時点では親知らず抜歯時の不安軽減における有効性は明確ではありません。日本の臨床現場での適用を考える際には、さらなるエビデンスの蓄積が必要です。また、患者の個別のニーズや不安の程度に応じたケアが重要です。VRの導入にはコストや設備の問題も考慮する必要がありますが、患者の体験を向上させる可能性があるため、今後の研究に期待が寄せられます。
(FAQ)
Q. 歯科治療時の不安を軽減する方法はありますか?
A. 歯科治療時の不安軽減には、リラクゼーション技法や音楽療法、カウンセリングなどが有効です。日本歯科医師会などのガイドラインでは、患者の不安を軽減するためのコミュニケーションの重要性が強調されています。個々の患者に合わせたアプローチが必要であり、症状が強い場合は専門医の相談を検討してください。
Q. バーチャルリアリティは医療でどのように使われていますか?
A. バーチャルリアリティ(VR)は、医療現場でリハビリテーションや手術シミュレーション、不安軽減などに利用されています。日本医療機器学会などでは、VRの医療応用が進んでいることが報告されていますが、適用には個別の状況に応じた判断が必要です。新しい技術の導入には、医療機関での相談が推奨されます。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
不安や悩みを抱えている方は開院後お気軽にご相談ください。当院スタッフが丁寧にサポートいたします。