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(新着論文)軍人・退役軍人・公務員向けデジタルメンタルヘルス介入の現状

原題: Digital Health Interventions for Military Members, Veterans, and Public Safety Personnel: Scoping Review.
Allen RR, Malik MA, Aquin C, Herceg L, Brémault-Phillips S, Sevigny PR / JMIR mHealth and uHealth / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:

軍人、退役軍人、公務員はメンタルヘルスの課題を抱えやすく、特有の障壁により治療を受けられないことが多いです。アプリやウェブサイトを通じたメンタルヘルス治療(デジタルメンタルヘルス介入、DMHI)は、対面治療の代替手段としてアクセスしやすい選択肢を提供します。本研究は、これらの集団のレジリエンスやウェルビーイングを向上させるアプリやウェブプログラムに関する文献を統合することを目的としました。I-COPPEモデル(対人、コミュニティ、職業、身体、心理、経済、全体的なウェルビーイング)を枠組みとして用い、6つのデータベースを検索しました。合計44件の論文が研究に含まれ、39のユニークなアプリやウェブプログラムが特定されました。これらのプログラムの多くは退役軍人を対象としており、主に認知行動療法に基づいていました。DMHIはアクセスしやすく、スケーラブルであるため有望ですが、対面治療の代替としての有効性を確認するためにはさらなる研究が必要です。

PECO:

  • P(対象): 軍人、退役軍人、公務員
  • E(暴露): デジタルメンタルヘルス介入(アプリやウェブプログラム)
  • C(比較): 対面のメンタルヘルス治療
  • O(結果): レジリエンスやウェルビーイングの向上

一言: 軍人や退役軍人、公務員はメンタルヘルスの課題を抱えやすく、デジタルメンタルヘルス介入(DMHI)は対面治療の代替手段として有望です。本研究は、これらの集団に対するアプリやウェブプログラムの現状を整理し、心理的および身体的健康の向上に寄与する可能性を示しました。

エビデンスレベル: 6/10
評価理由: デジタルメンタルヘルス介入はアクセスしやすく、スケーラブルであるため有望ですが、対面治療の代替としての有効性を確認するためにはさらなる研究が必要です。現時点では、サンプルサイズの小ささや脱落率が一般化を制限しています。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

デジタルメンタルヘルス介入(DMHI)は、軍人、退役軍人、公務員に対するメンタルヘルス支援の新たな手段として注目されています。これらの集団は、特有の障壁により従来の対面治療を受けにくい状況にありますが、DMHIはそのような障壁を克服する可能性があります。特に、認知行動療法に基づくプログラムが多く、心理的および身体的健康の向上に寄与することが示唆されています。しかし、現時点では、サンプルサイズの小ささや脱落率が高く、結果の一般化には限界があります。日本の臨床現場においても、DMHIの導入は検討に値しますが、文化的背景や言語の違いを考慮した適応が必要です。さらに、対面治療との併用や補完的な役割を果たす可能性があるため、個々の患者のニーズに応じた柔軟な対応が求められます。

(FAQ)

Q. デジタルメンタルヘルス介入はどのような効果がありますか?
A. デジタルメンタルヘルス介入(DMHI)は、軍人や退役軍人、公務員のレジリエンスやウェルビーイングの向上に寄与する可能性があります。特に、認知行動療法に基づくプログラムが多く、心理的および身体的健康の改善が期待されています。

Q. デジタルメンタルヘルス介入は対面治療の代わりになりますか?
A. DMHIはアクセスしやすく、スケーラブルであるため有望ですが、対面治療の完全な代替としての有効性を確認するためにはさらなる研究が必要です。現時点では、対面治療との併用や補完的な役割を果たす可能性があります。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料