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(新着論文)運動介入が子どものうつ、不安、自尊心に与える影響
原題: Effect of exercise interventions on depression, anxiety, and self-esteem in children and adolescents: a systematic review and network meta-analysis.
Zhou S, Xu Y, Yang Y, Song H, Wang X, Yu Y / BMC public health / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
この研究は、子どもと青年における運動介入がうつ病、不安、自尊心に与える影響を評価し、最適な運動治療法を特定することを目的としています。PubMed、Cochrane Library、Embase、Scopus、Web of Scienceのデータベースを用いて、ランダム化比較試験(RCT)を包括的に検索しました。検索期間は各データベースの開始から2025年4月までです。合計27のRCTが選ばれ、3059人の子どもと青年が対象となりました。ペアワイズメタアナリシスでは、運動がうつ病(MD = -0.29, 95% CI [-0.44, -0.14])と自尊心(MD = 0.23, 95% CI [0.07, 0.38])に有意な改善をもたらすことが示されましたが、不安には有意な効果が見られませんでした(MD = -0.12, 95% CI [-0.32, 0.09])。ネットワークメタアナリシスでは、有酸素運動がうつ病の改善に、レジスタンストレーニングが自尊心の向上に有意な効果を示しましたが、不安の軽減にはどの運動介入も有意な効果を示しませんでした。累積ランク曲線(SUCRA)によると、レジスタンストレーニングがうつ病の改善に最も効果的であり、結合された有酸素運動とレジスタンストレーニングが不安の軽減に最も効果的であることが示されました。このネットワークメタアナリシスのエビデンスの質は「低」から「中程度」と評価されました。レジスタンストレーニングは他の運動方法よりもうつ病の症状と自尊心の改善に効果的であり、結合された有酸素運動とレジスタンストレーニングは不安症状の軽減に有益である可能性があります。
PICO:
- P(対象): 子どもと青年
- I(介入): 運動介入(有酸素運動、レジスタンストレーニング、結合運動)
- C(比較): 対照群
- O(結果): うつ病、不安、自尊心の改善
一言: 本研究は、子どもと青年における運動介入がうつ病、不安、自尊心に与える影響を評価し、最適な運動治療法を特定することを目的としています。27のランダム化比較試験を分析した結果、運動はうつ病と自尊心に有意な改善をもたらしましたが、不安には有意な効果が見られませんでした。特に、レジスタンストレーニングがうつ病と自尊心の改善に効果的であることが示されました。
エビデンスレベル: 6/10
評価理由: この研究は27のランダム化比較試験を基にしており、一定の信頼性がありますが、エビデンスの質は「低」から「中程度」と評価されています。したがって、結果の解釈には注意が必要です。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
この研究は、子どもと青年における運動介入が精神的健康に与える影響を評価したもので、特にレジスタンストレーニングがうつ病と自尊心の改善に有効であることを示しています。日本の臨床現場においても、運動療法は精神的健康の改善に利用されることが多く、特に学校や地域の健康プログラムにおいて活用が期待されます。しかし、エビデンスの質が「低」から「中程度」と評価されているため、個々の患者に対する適用には慎重な判断が必要です。また、不安に対する効果が有意でないことから、他の治療法との併用が考慮されるべきです。運動の種類や頻度、強度についても個別に調整することが重要です。日本の文化や生活習慣に合わせた運動プログラムの開発が求められます。
(FAQ)
Q. 運動は子どものうつ病に効果がありますか?
A. この研究では運動が子どものうつ病に有意な改善をもたらすことが示されています。特にレジスタンストレーニングが効果的であるとされています。ただし、個々の状況に応じた適切な運動プログラムの選択が重要です。
Q. 運動は不安の軽減に効果がありますか?
A. この研究では、運動が不安の軽減に有意な効果を示さなかったとされています。しかし、結合された有酸素運動とレジスタンストレーニングが不安の軽減に有益である可能性が示唆されています。
Q. どの運動が自尊心の向上に効果的ですか?
A. レジスタンストレーニングが自尊心の向上に最も効果的であるとされています。運動は自己効力感を高めるため、適切なプログラムを選ぶことが重要です。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
不安や悩みを抱えている方は開院後お気軽にご相談ください。当院スタッフが丁寧にサポートいたします。