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(新着論文)音楽療法が熱傷患者に与える影響:系統的レビューとメタ解析

原題: Effects of music intervention in patients with burn injury: A systematic review and meta-analysis.
Wang H, Qiu R, Huang H, Chen B / Medicine / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:

熱傷は世界的な健康問題であり、身体的および心理的な影響を及ぼす可能性があります。音楽療法が熱傷患者に与える影響については多くの報告がありますが、結果は一貫していませんでした。本研究では、熱傷患者を対象としたランダム化比較試験を用いて、音楽療法の効果を系統的にレビューし、メタ解析を行いました。系統的レビューとメタ解析は、2020年のPRISMAガイドラインに従って実施され、PROSPEROに登録されました。PubMed、Web of Science、Cochrane Library、EMBASEのデータベースを用いて、2024年12月以前に発表された記事を検索しました。音楽と熱傷の2つのキーワードに焦点を当てました。Cochraneのバイアスリスクツール(2.0)を用いて研究の質を評価し、StataMP-64ソフトウェアを用いてデータを解析しました。音楽療法に関連する16件の試験が含まれ、1038人の熱傷患者が対象となりました。音楽療法は、痛み(標準化平均差[SMD] = -1.01, 95%信頼区間[CI] [-1.15, -0.86])、不安(SMD = -1.68, 95% CI [-2.44, -0.93])、筋緊張(SMD = -2.23, 95% CI [-3.46, -1.00])を有意に軽減しましたが、心拍数、呼吸数、平均血圧には有意な差は見られませんでした。これらの結果は、音楽療法が熱傷患者の痛み、不安、筋緊張の軽減に有効であることを示しています。

PICO:

  • P(対象): 熱傷患者
  • I(介入): 音楽療法
  • C(比較): 非音楽療法
  • O(結果): 痛み、不安、筋緊張の軽減

一言: 熱傷患者に対する音楽療法の効果を検証した系統的レビューとメタ解析の結果、音楽療法は痛み、不安、筋緊張の軽減に有効であることが示されましたが、心拍数や血圧には影響を及ぼさないことが確認されました。

エビデンスレベル: 8/10

評価理由: この研究は16件のランダム化比較試験を含むメタ解析であり、信頼性の高い結果を提供しています。ただし、心拍数や血圧に影響がないことから、音楽療法の効果は限定的である可能性があります。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

音楽療法は、熱傷患者の痛みや不安、筋緊張を軽減するための補完的な治療法として有望です。特に、非侵襲的で副作用が少ないため、他の治療法と併用することで患者のQOLを向上させる可能性があります。しかし、心拍数や血圧に対する影響は確認されておらず、これらの生理的指標を改善する目的での使用は推奨されません。日本の臨床現場でも、音楽療法はリラクゼーションやストレス軽減の手段として広く受け入れられており、熱傷患者への応用も期待されます。ただし、個々の患者の好みや文化的背景を考慮し、適切な音楽を選択することが重要です。また、音楽療法の効果を最大限に引き出すためには、専門家の指導のもとで実施することが望ましいです。

(FAQ)

Q. 音楽療法はどのように熱傷患者に役立つのですか?
A. 本研究からは音楽療法は、熱傷患者の痛みや不安、筋緊張を軽減する効果がありそうです。音楽を聴くことでリラクゼーションが促進され、心理的なストレスが和らぐため、治療の補助として有効だと考えられます。

Q. 音楽療法は心拍数や血圧に影響を与えますか?
A. この研究では、音楽療法が心拍数や血圧に有意な影響を与えないことが示されました。したがって、これらの生理的指標を改善する目的での音楽療法の使用は推奨されません。

Q. 日本の病院でも音楽療法は使われていますか?
A. はい、日本の病院でも音楽療法はリラクゼーションやストレス軽減の手段として利用されることがあります。詳しくは各診療所や病院にお問い合わせください。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料