最新の研究から、外来の皆さまに役立つ知見を簡潔にご紹介します。
(新着論文)COVID-19による職場環境変化が不安に与える影響
原題: The impact of changes to work circumstances enforced by COVID-19 on anxiety: a systematic review.
D’Angelo S, Zaballa E, Ntani G, Bloom I, Walker-Bone K / Systematic reviews / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
COVID-19パンデミックは全ての労働者に職場環境の変化を強制しましたが、特に高齢労働者が職を失った場合、若年者に比べて再就職が難しいことが分かっています。通常、職を失うことは精神的健康に悪影響を及ぼすリスク要因として知られていますが、在宅勤務が精神的健康に良いのか悪いのかは不明です。本研究では、職を失うこと、在宅勤務、休業が成人の不安に与える影響を系統的にレビューしました。特に高齢労働者に焦点を当て、2020年1月から2023年7月までのデータベースを検索しました。48件の研究が基準を満たし、39件は横断的研究、9件は縦断的研究でした。職を失ったことが不安に与える悪影響は明確でしたが、在宅勤務や休業の影響は一貫していませんでした。パンデミック中の職場の混乱は成人と高齢労働者の不安を増加させましたが、これらの影響がどの程度持続するのか、また最も影響を受けた人々を支援するための戦略を特定するために、さらなる研究が必要です。
PECO:
- P(対象): 成人労働者(特に50歳以上の高齢労働者)
- E(暴露): 職を失う、在宅勤務、休業
- C(比較): 通常の職場環境
- O(結果): 不安の増加
一言: COVID-19パンデミックは職場環境に大きな変化をもたらし、特に高齢労働者の不安に影響を与えました。職を失った高齢者は若年者よりも再就職が難しく、在宅勤務の精神的影響は不明確です。本研究はこれらの変化と不安の関連を系統的にレビューしました。
エビデンスレベル: 7/10
評価理由: 本研究は48件の研究を系統的にレビューし、職を失うことが不安に与える影響を明確に示しましたが、在宅勤務や休業の影響については一貫性がありませんでした。さらなる研究が必要です。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
COVID-19パンデミックは職場環境に大きな変化をもたらし、特に高齢労働者において不安の増加が確認されました。職を失うことは精神的健康に悪影響を及ぼすことが明確に示されましたが、在宅勤務や休業の影響については研究間で結果が一致しませんでした。日本の臨床現場においても、職を失った高齢者への精神的サポートが重要です。特に、再就職が難しい高齢者に対する支援策の開発が求められます。また、在宅勤務の精神的影響については、個々の状況に応じた対応が必要です。今後の研究では、これらの影響がどの程度持続するのか、また最も影響を受けた人々を支援するための具体的な戦略を特定することが求められます。
よくある質問(FAQ)
Q. COVID-19による職場環境の変化はどのように不安に影響しますか?
A. 職を失うことは不安を増加させることが明確に示されていますが、在宅勤務や休業の影響については一貫した結果が得られていません。特に高齢労働者は再就職が難しく、精神的サポートが重要です。
Q. 在宅勤務は精神的健康に良い影響を与えるのでしょうか?
A. 在宅勤務の精神的影響については研究間で結果が一致しておらず、良い影響を与えるかどうかは不明です。個々の状況に応じた対応が必要です。
Q. 高齢労働者に対する対応策はありますか?
A. 高齢労働者が職を失った場合、再就職が難しいため、精神的サポートが重要です。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
不安や悩みを抱えている方は開院後お気軽にご相談ください。当院スタッフが丁寧にサポートいたします。