最新の研究から、外来の皆さまに役立つ知見を簡潔にご紹介します。

(新着論文)COVID-19パンデミック下での遠隔医療従事者の対処法とメンタルヘルス

原題: Coping strategies and mental health among remote hospital workers in the COVID-19 pandemic: A multicenteric cohort study from Pakistan.
Kirmani SAH, Khan SA, Sharif MA, Batool S, Mahsud M, Ahmad SN, Aleem S, Siddique MU, Shahid M, Ahmed H, Kausar H, Kauser H / Medicine / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:
COVID-19パンデミックとデジタル変革により、医療現場での遠隔勤務が大幅に拡大しました。本研究は、パキスタンのラホールとカラチにおける遠隔医療従事者(医師、看護師、技術者、管理職を含む)が用いる個人および組織的対処法を評価しました。12か月間にわたり、5つの病院で約800人の参加者を対象に調査を行い、PHQ-9とGAD-7を用いてメンタルヘルスを評価しました。個人の対処法には家族の支援、ポジティブ思考、祈り、運動、マインドフルネスが含まれ、組織的対処法には柔軟な勤務時間、ITサポート、定期的な上司とのチェックインがありました。身体活動やバーチャルな社会的支援、効果的な時間管理は、PHQ-9およびGAD-7スコアの低下と関連していました。結論として、個人および組織的対処法はストレス軽減に効果的であり、これらの対処法を促進する制度的政策の重要性が示されました。

PECO:

  • P(対象): ラホールとカラチの遠隔勤務を行う医療従事者(医師、看護師、技術者、管理職)
  • E(暴露): 個人および組織的対処法(家族支援、ポジティブ思考、祈り、運動、マインドフルネス、柔軟な勤務時間、ITサポート、上司とのチェックイン)
  • C(比較): 対処法を用いない群
  • O(結果): PHQ-9およびGAD-7スコアの変化(12か月間)

一言: この研究は、パキスタンのラホールとカラチにおける遠隔医療従事者が用いる個人および組織的対処法の有効性を評価しました。12か月間にわたり、800人の参加者を対象に調査を行い、身体活動や時間管理がメンタルヘルス改善に寄与することが示されました。

エビデンスレベル: 7/10
評価理由: この研究は多施設で行われた観察研究であり、サンプルサイズも大きく、結果の信頼性は高いです。しかし、因果関係を証明するにはさらなる研究が必要です。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

この研究は、遠隔勤務を行う医療従事者におけるメンタルヘルスの維持に対する個人および組織的対処法の有効性を示しています。特に、身体活動や時間管理、バーチャルな社会的支援がメンタルヘルスの改善に寄与することが示されました。日本の医療現場でも、遠隔勤務が増加する中で、これらの対処法を取り入れることは有益です。ただし、文化的背景や職場環境の違いを考慮し、適切な対策を講じることが重要です。また、過度なニュース消費やワーカホリズムがメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があるため、バランスの取れた情報収集と労働時間の管理が求められます。これらの知見は、遠隔およびハイブリッド勤務環境におけるスタッフの健康維持に役立つ制度的政策の策定に寄与するでしょう。

(FAQ)

Q. 遠隔勤務がメンタルヘルスに与える影響は?
A. 遠隔勤務は、通勤時間の削減や柔軟な働き方を可能にする一方で、孤立感やストレスの増加を招くことがあります。日本産業衛生学会は、適切なコミュニケーションや労働時間の管理が重要としています。個人の状況に応じた対策が必要で、メンタルヘルスに不安がある場合は専門家に相談しましょう。

Q. メンタルヘルスを維持するための効果的な対処法は?
A. メンタルヘルスを維持するためには、定期的な運動、十分な睡眠、バランスの取れた食事、社会的つながりの維持が推奨されます。厚生労働省もこれらの方法を推奨しており、ストレスを感じた場合は早めに専門家に相談することが重要です。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料