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(新着論文)COVID-19パンデミック各段階におけるメンタルヘルス症状の変化と要因

原題: Mental health symptoms and associated factors for general population at the stable, recurrence, and end-of-emergency stages of the COVID-19 pandemic: a repeated national cross-sectional study.

Wang S, Zhang Y, Ding W, Meng Y, Hu H, Guan Y, Zeng X, Liu Z, Meng F, Wang M, Zhang J / Epidemiology and psychiatric sciences / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:

COVID-19パンデミックは心理的苦痛を悪化させましたが、各段階でのメンタルヘルス症状の変化と関連要因についての情報は限られています。本研究では、安定期(2021年)、再発期(2022年)、緊急事態終了期(2023年)における全国的な反復横断研究を実施しました。GAD-7、PHQ-9、IES-R、ISIスケールを用いて不安、うつ、PTSD、不眠症状を評価し、多変量線形回帰で関連要因を特定しました。42,000人が募集され、各段階で36,218、36,097、36,306人が参加しました。不安、うつ、不眠の症状は安定期の13.7-16.4%から再発期の17.3-22.2%に増加し、緊急事態終了期には14.5-18.6%に減少しましたが、PTSD症状は5.1%から7.6%、9.2%と増加しました。全段階で共通する要因には、集中隔離、最前線での勤務、初期に感染が広がった地域の居住が含まれます。集中隔離は不安、うつ、PTSD、不眠と関連し、最前線の労働者はこれらのリスクが高く、初期に感染が広がった地域の住民は特に安定期と再発期にうつとPTSDを経験しやすいことが示されました。特定の段階に特有のリスク要因も特定され、屋外活動の欠如は安定期と再発期に不安、うつ、不眠と関連し、再発期の高リスク地域の住民は不安と不眠が増加しました。疑われる感染は再発期と緊急事態終了期に不安と不眠と関連し、家族や友人の死は再発期にPTSD、緊急事態終了期にうつ、PTSD、不眠と関連しました。パンデミックが再発するとメンタルヘルス症状が増加し、緊急事態終了後も残る可能性があるため、長期的な介入が必要です。

PECO:

  • P(対象): 一般国民
  • E(暴露): COVID-19パンデミックの安定期、再発期、緊急事態終了期
  • C(比較): 各段階におけるメンタルヘルス症状の変化
  • O(結果): 不安、うつ、PTSD、不眠の症状の変化と関連要因

一言: COVID-19パンデミックは心理的苦痛を悪化させましたが、各段階でのメンタルヘルス症状の変化と関連要因についての情報は限られています。本研究は、パンデミックの安定期、再発期、緊急事態終了期におけるメンタルヘルスへの影響の変化をより正確に評価し、症状に関連する要因を特定することを目的としています。

エビデンスレベル: 8/10

評価理由: 大規模な全国的調査であり、代表性のあるデータを用いているため、信頼性が高いと考えられます。しかし、横断研究であるため因果関係の特定には限界があります。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

本研究は、COVID-19パンデミックの異なる段階におけるメンタルヘルス症状の変化とその関連要因を明らかにしました。特に、集中隔離や最前線での勤務、感染が広がった地域の居住がメンタルヘルスに与える影響が示されました。これらの知見は、パンデミック時のメンタルヘルス支援策の策定に役立つ可能性があります。日本においても、同様の状況が考えられるため、これらの要因を考慮した介入が必要です。特に、集中隔離や最前線での勤務を経験する人々に対する心理的サポートが重要です。また、パンデミックの再発や緊急事態終了後もメンタルヘルス症状が残る可能性があるため、長期的な支援が求められます。さらに、屋外活動の欠如や感染の疑いがメンタルヘルスに与える影響も考慮する必要があります。これらの知見は、日本の臨床現場においても有用であり、パンデミック時のメンタルヘルスケアの改善に寄与するでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q. COVID-19パンデミックはメンタルヘルスにどのような影響を与えましたか?

A. パンデミックは不安、うつ、PTSD症状、不眠症状を悪化させました。特に、集中隔離や最前線での勤務、感染が広がった地域の居住がこれらの症状に関連しています。

Q. パンデミックの各段階でメンタルヘルス症状はどのように変化しましたか?

A. 安定期から再発期にかけて不安、うつ、不眠の症状が増加し、緊急事態終了期に減少しましたが、PTSD症状は一貫して増加しました。

Q. どのような人々がメンタルヘルスのリスクが高いですか?

A. 集中隔離を経験した人、最前線で働く人、感染が広がった地域に住む人がリスクが高いです。また、屋外活動の欠如や感染の疑いもリスクを高めます。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。(監修者プロフィール

患者さんへのメッセージ

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参考リンク・関連資料