最新の研究から、外来の皆さまに役立つ知見を簡潔にご紹介します。
(新着論文)STAC-Tいじめ傍観者アプリの受容性と短期効果に関する研究
原題: Acceptability, Relevance, and Short-Term Outcomes of the STAC-T Bullying Bystander App: Feasibility Quantitative Study.
Doumas DM, Midgett A, Hausheer R, Winburn A, Buller MK, Perron T, Shelton J, Herbeck B / JMIR formative research / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
いじめは公衆衛生上の重大な問題であり、過去1年間に約25%の中学生がいじめの対象となったと報告しています。いじめの対象者や目撃者は、うつ病や不安症などの精神的健康リスクが高まります。STACは中学生向けのエビデンスに基づくいじめ傍観者介入プログラムであり、いじめの加害や被害の減少、関連する精神的健康リスクの低減を目的としています。本研究では、STACの技術版であるSTAC-Tを開発し、対面でのいじめ防止プログラムの実施障壁を減らすことを目指しました。STAC-Tは40分のトレーニングと15分のブースターセッションを含むインタラクティブなアプリです。本研究は、STAC-Tプログラムの受容性と関連性を評価することを目的とし、プログラムの受容性と関連性が、学生がプログラムで学ぶ特定の傍観者介入スキル(例:STAC戦略)の使用にどのように関連しているかを調査しました。アメリカの農村部の低所得コミュニティにある6つの中学校から募集された学生を対象に、STAC-T介入または対照条件にランダム化しました。229人の学生が30日後のフォローアップ調査を完了し、プログラムの受容性と関連性、いじめの目撃後のSTAC戦略の使用を評価しました。調査の結果、プログラムは受容性(82.1%から90.0%)と関連性(78.6%から83.0%)が高いと報告されました。いじめを目撃した学生の54.6%が少なくとも1つのSTAC戦略を使用したと報告しました。回帰分析により、プログラムの関連性がSTAC戦略の使用の有意な予測因子であることが示されました(P=.016)。
PICO:
- P(対象): アメリカの農村部の低所得コミュニティにある中学校の学生
- I(介入): STAC-Tいじめ傍観者介入アプリの使用
- C(比較): 対照条件(STAC-Tを使用しない)
- O(結果): プログラムの受容性、関連性、いじめ介入スキルの使用
一言: STAC-Tは中学生向けのいじめ防止アプリで、受容性と関連性が高いことが確認されました。特に、プログラムの関連性がいじめ介入スキルの使用に影響を与えることが示されました。
確かさ(GRADE): 中等度
理由: この研究はランダム化試験であり、結果の一貫性が確認されていますが、サンプルサイズが限定的であるため、確信度は中程度です。
研究の信頼性(RoB 2(ランダム化試験)): やや懸念
- 参加者の割付方法: 低い(大きな問題なし)
- 予定した介入からのずれ: やや懸念
- アウトカムの欠測: 低い(大きな問題なし)
- 結果の測り方: 低い(大きな問題なし)
- 報告された結果の選び方: やや懸念
解説: この研究はランダム化試験であり、結果は一定の信頼性がありますが、報告された結果の選択にいくつかの懸念があります。したがって、結果を解釈する際には注意が必要です。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
STAC-Tアプリは、中学生を対象としたいじめ防止プログラムとして有望です。特に、プログラムの関連性がいじめ介入スキルの使用に影響を与えることが示されており、学生の特定のニーズに合わせたプログラム設計が重要です。日本の教育現場でも、いじめ防止のための技術的介入が求められており、STAC-Tのようなアプリはその一助となる可能性があります。ただし、文化的背景や教育制度の違いを考慮し、日本の学生に適した形での導入が必要です。また、プログラムの受容性を高めるためには、学生や教育者のフィードバックを反映させることが重要です。STAC-Tの効果を最大限に引き出すためには、継続的な評価と改善が求められます。
(FAQ)
Q. いじめ防止プログラムはどのように効果を発揮しますか?
A. いじめ防止プログラムは、学生にいじめの認識を高め、介入スキルを教えることで効果を発揮します。これにより、いじめの発生を減少させ、被害者の精神的健康を守ることができます。日本でも、文部科学省のガイドラインに基づき、学校でのいじめ防止教育が推進されています。いじめを目撃した場合は、信頼できる大人に相談することが重要です。
Q. いじめを目撃したとき、どのように対処すればよいですか?
A. いじめを目撃した場合、直接介入するのではなく、まずは信頼できる大人に報告することが推奨されます。日本の教育現場では、いじめ防止のためのガイドラインが整備されており、教師やカウンセラーが適切に対応する体制が整っています。自身の安全を確保しつつ、被害者を支える行動が求められます。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
不安や悩みを抱えている方は開院後お気軽にご相談ください。当院スタッフが丁寧にサポートいたします。