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(新着論文)不眠症に対するデジタル認知行動療法の効果:全米ランダム化試験

原題: The Effectiveness of Digital Cognitive Behavioral Therapy to Treat Insomnia Disorder in US Adults: Nationwide Decentralized Randomized Controlled Trial.
Prather AA, Krystal AD, Emsley R, Carl J, Ball T, Tarnai K, Aguilera A, Espie CA, Henry AL / JMIR mental health / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:
不眠症の第一選択治療として認知行動療法(CBT)が推奨されていますが、多くの患者はその治療を受けることができません。本研究では、FDA承認のデジタルCBTプログラム「SleepioRx」の効果を、オンライン睡眠衛生教育(SHE)と比較して評価しました。2022年11月から2023年8月にかけて、全米から募集した22歳以上の成人336名を対象に、無作為化比較試験を実施しました。主要評価項目は、不眠症の重症度(ISI)と睡眠日誌による睡眠潜時(SOL)および睡眠中断後覚醒(WASO)で、10週後の治療効果を評価し、16週および24週後に追跡調査を行いました。結果、SleepioRxはSHEと比較してISIの有意な改善を示し(10週後、Cohen d=0.60, P<.001)、効果は追跡調査でも持続しました(16週後、d=0.65, P<.001; 24週後、d=0.77, P<.001)。WASOの改善も全ての評価時点で有意でしたが、SOLの改善は統計的に有意ではありませんでした。SleepioRxは、10週後の反応および寛解のオッズ比がそれぞれ2.5倍(P<.001)および5.8倍(P<.001)であり、追跡調査でも有意な差が持続しました。この結果は、デジタルCBT-Iが不眠症治療に有効であることを示し、FDA承認のデジタル治療の可能性を示唆しています。

PICO:

  • P(対象): 22歳以上のDSM-5不眠症と診断された成人336名
  • I(介入): デジタル認知行動療法プログラム(SleepioRx)
  • C(比較): オンライン睡眠衛生教育(SHE)
  • O(結果): 不眠症の重症度(ISI)、睡眠潜時(SOL)、睡眠中断後覚醒(WASO)

一言: 不眠症の第一選択治療として推奨される認知行動療法(CBT)は、アクセスが限られています。本研究では、FDA承認のデジタルCBTプログラム「SleepioRx」が、オンライン睡眠衛生教育と比較して不眠症の症状を有意に改善することを示しました。これにより、デジタル治療の普及が期待されます。

確かさ(GRADE): 高い

理由: この研究はランダム化比較試験であり、参加者数も多く、結果の一貫性が確認されています。したがって、結果の確実性は高いと評価されます。

研究の信頼性(RoB 2(ランダム化試験)): 低い(大きな問題なし)

  • 参加者の割付方法: 低い(大きな問題なし)
  • 予定した介入からのずれ: 低い(大きな問題なし)
  • アウトカムの欠測: 低い(大きな問題なし)
  • 結果の測り方: 低い(大きな問題なし)
  • 報告された結果の選び方: 低い(大きな問題なし)

解説: この研究は、ランダム化と適切なデータ管理が行われており、結果の信頼性は高いと考えられます。したがって、結果に基づく推奨は信頼できます。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

本研究は、デジタル認知行動療法(CBT)が不眠症治療に有効であることを示しています。SleepioRxは、従来のCBTと同様に不眠症の重症度を改善し、効果が持続することが確認されました。特に、治療へのアクセスが限られている患者にとって、デジタル治療は有用な選択肢となる可能性があります。日本においても、デジタル治療の普及が進めば、より多くの患者が適切な治療を受けられるようになるでしょう。ただし、デジタル治療の効果は個人差があるため、患者の状態に応じた適切な治療選択が重要です。また、デジタル治療の導入に際しては、患者のデジタルリテラシーやインターネット環境の整備も考慮する必要があります。今後、日本の臨床現場での実施可能性や効果についても検討が求められます。

(FAQ)

Q. 不眠症にはどのような治療法がありますか?
A. 不眠症の治療法には、認知行動療法(CBT)や薬物療法があります。CBTは、睡眠習慣の改善やストレス管理を通じて不眠症を治療する方法で、ガイドラインでも第一選択として推奨されています。薬物療法は、短期間の使用が一般的で、医師の指導のもとで行われます。

Q. デジタル認知行動療法はどのように利用できますか?
A. デジタル認知行動療法は、インターネットを通じて提供されるプログラムで、医療機関からの指示や処方に基づいて利用できます。ガイドラインに基づく治療法であり、特にアクセスが難しい地域や時間が限られている患者にとって有用です。ただし、効果は個人差があるため、医師と相談しながら利用することが重要です。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料