最新の研究から、外来の皆さまに役立つ知見を簡潔にご紹介します。
(新着論文)PTSDに対する運動と心理療法の併用効果の系統的レビュー
原題: Augmentation of psychotherapy with exercise in adult populations affected by posttraumatic stress disorder: a systematic review of randomized controlled trials.
Niemeyer H, Opper F, Sjöström LM, Knaevelsrud C, Nohr L / European journal of psychotraumatology / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対する運動の効果はこれまでに示されていますが、心理療法との最適な組み合わせは明らかになっていません。本研究は、運動と心理療法の組み合わせ(順序、種類、頻度、期間、実施方法、強度)がPTSD症状の重症度に与える影響を評価することを目的とした系統的レビューです。PROSPEROに登録後、2025年2月17日までの文献を系統的に検索し、PTSD診断を受けた成人を対象とした運動を併用した心理療法のRCTを含めました。PTSD症状を主要なアウトカムとして評価し、バイアスのリスク(RoB-2)と報告の質(CONSORTチェックリスト)を2名のレビュアーが評価しました。合計677名の参加者を含む5つの研究が含まれ、4つの研究は主に女性を対象としていました。研究の質は全体的に良好で、1つの研究は高いバイアスのリスクを示しました。PTSD症状に対する群間効果量は小から大までの範囲で、3つの研究が肯定的な効果を報告しました。運動を併用した心理療法の有望なデザインには、週に20〜30分の有酸素運動を9〜12週間行うことが含まれ、個別またはグループ形式で中程度から強度の運動が推奨されました。運動は90分の心理療法セッションと組み合わせられ、個別またはグループ形式で異なる順序で実施されました。セッションの長さは系統的に変化しませんでした。結論として、運動と心理療法のさまざまなデザインがPTSD症状の軽減に有望であることが示されましたが、最も効果的なデザインについての決定的な結論を得るには至っておらず、さらなる高品質なRCTが必要です。
PICO:
- P(対象): PTSD診断を受けた成人患者
- I(介入): 運動を併用した心理療法(有酸素運動、抵抗運動、個別またはグループ形式)
- C(比較): 心理療法のみまたは通常のケア
- O(結果): PTSD症状の重症度の変化
一言: 本研究は、PTSD患者における運動と心理療法の併用効果を評価した系統的レビューです。5つのRCTを分析し、運動と心理療法の組み合わせがPTSD症状の軽減に有望であることを示しましたが、最適なデザインの特定には至りませんでした。
確かさ(GRADE): 中等度
理由: 研究の数が限られており、結果のばらつきがあるため、確信度は中程度です。さらなる高品質な研究が必要です。
研究の信頼性(RoB 2(ランダム化試験)): やや懸念
- 参加者の割付方法: 低い(大きな問題なし)
- 予定した介入からのずれ: やや懸念
- アウトカムの欠測: 低い(大きな問題なし)
- 結果の測り方: やや懸念
- 報告された結果の選び方: 低い(大きな問題なし)
解説: 全体として、研究の質は良好ですが、いくつかのバイアスの懸念が残ります。結果を解釈する際には注意が必要です。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
PTSDに対する運動と心理療法の併用は、症状の軽減に有望なアプローチとして注目されています。本研究では、週に20〜30分の有酸素運動を9〜12週間行うことが効果的である可能性が示されましたが、最適なデザインを特定するには至っていません。日本の臨床現場では、運動療法の導入に際して、患者の個別の状態や好みを考慮することが重要です。また、運動の種類や強度、頻度については、患者の体力や健康状態に応じて調整する必要があります。心理療法との組み合わせにおいては、セッションの順序や形式が効果に影響を与える可能性があるため、個別のニーズに応じた柔軟な対応が求められます。さらに、運動療法の導入にあたっては、医療専門家の指導の下で安全に実施されることが重要です。今後の研究では、より多様な患者群を対象とした高品質なRCTが期待されます。
(FAQ)
Q. PTSDに対する運動療法はどのように効果がありますか?
A. 運動療法は、PTSDの症状を軽減する可能性があります。これは、運動がストレスホルモンの調整や気分の改善に寄与するためです。ただし、個々の症状や体力に応じたプログラムが必要です。症状が重い場合や運動に不安がある場合は、医師に相談することをお勧めします。
Q. PTSDに対する心理療法の効果はどのくらいですか?
A. 心理療法はPTSDの治療において効果的です。特に認知行動療法(CBT)は、症状の軽減に有効とされています。世界中のガイドラインでも推奨されていますが、効果は個人差があります。治療の進行や効果を確認するために、定期的な医師の診察が重要です。症状が改善しない場合は、治療法の見直しが必要です。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
不安や悩みを抱えている方は開院後お気軽にご相談ください。当院スタッフが丁寧にサポートいたします。