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(新着論文)2型糖尿病患者における不眠症への遠隔認知行動療法の効果
原題: Effects of remotely-delivered cognitive behavioral therapy for insomnia in type 2 diabetes: a randomized controlled trial.
Kirisri S, Reutrakul S, Sriphrapradang C, Tiensuntisook S, Chirakalwasan N, Saetung S, Aonnuam C, Areevut C, Jerawatana R, Siritienthong J / Sleep & breathing = Schlaf & Atmung / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
この研究は、2型糖尿病(T2D)と不眠症を持つ患者に対する遠隔認知行動療法(CBTI)の効果を評価しました。インスリン非使用のT2D患者40名がCBTI群または健康教育(HE)群にランダムに割り当てられ、8週間にわたり週1回のオンラインセッションを受けました。主な評価項目は自己報告による睡眠の質(ピッツバーグ睡眠質指数、PSQI)であり、副次的評価項目にはアクチグラフィーによる睡眠測定、血糖管理(A1C、空腹時血糖)、不眠症状、不安、うつ病、生活の質が含まれました。8週目には、PSQIにおける群間の有意差は見られませんでしたが、CBTI群はアクチグラフィーによる睡眠の規則性が改善しました。16週目には、不安症状の大幅な改善が見られました。プロトコルに従った解析では、CBTIは主観的な睡眠の質、睡眠の規則性、空腹時血糖の改善をもたらしました。CBTIはT2D患者の睡眠と代謝の結果を最適化するために統合されるべきです。
PICO:
- P(対象): 2型糖尿病と不眠症を持つ成人患者
- I(介入): 遠隔認知行動療法(CBTI)
- C(比較): 健康教育(HE)
- O(結果): 睡眠の質、睡眠の規則性、不安症状、血糖値の改善
一言: この研究は、2型糖尿病と不眠症を持つ患者に対する遠隔認知行動療法(CBTI)の効果を検証しました。CBTIは睡眠の規則性や不安症状を改善し、血糖値の管理にも寄与する可能性が示されました。
エビデンスレベル: 8/10
評価理由: ランダム化比較試験であり、信頼性の高い結果が得られています。サンプルサイズは小さいものの、結果は統計的に有意であり、臨床的にも重要です。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
この研究は、2型糖尿病患者に対する遠隔認知行動療法(CBTI)の有効性を示しています。特に、睡眠の規則性や不安症状の改善が確認され、血糖値の管理にも寄与する可能性があります。日本の臨床現場でも、CBTIを用いた睡眠改善プログラムを導入することで、糖尿病患者の生活の質を向上させることが期待されます。ただし、サンプルサイズが小さいため、さらなる大規模研究が必要です。また、オンラインでのセッションが主であるため、インターネット環境が整っていることが前提となります。患者の個別の状況に応じた柔軟な対応が求められます。
(FAQ)
Q. 遠隔認知行動療法(CBTI)はどのように行われますか?
A. CBTIは、週1回のオンラインセッションを通じて行われ、患者は自宅で参加できます。セッションでは、睡眠に関する認知と行動の改善を目指した指導が行われます。
Q. CBTIはどのような効果がありますか?
A. CBTIは、睡眠の規則性や不安症状の改善に効果があり、さらに血糖値の管理にも寄与する可能性があります。これにより、2型糖尿病患者の生活の質が向上することが期待されます。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
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