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(新着論文)AIチャットボットと医療専門家の共感力比較: 系統的レビューとメタ分析

原題: AI chatbots versus human healthcare professionals: a systematic review and meta-analysis of empathy in patient care.
Howcroft A, Bennett-Weston A, Khan A, Griffiths J, Gay S, Howick J / British medical bulletin / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:
共感は患者の痛みや不安を軽減し、満足度を向上させる重要な要素です。AIチャットボットの医療分野での利用が急速に拡大しており、一般開業医の5人に1人がAIを業務支援に利用しています。AIチャットボットが医療専門家よりも共感力で優れているとする研究もありますが、結果は一貫しておらず、統合的な分析が不足しています。本研究では、大規模言語モデルを使用したAIチャットボットと人間の医療専門家を共感力で比較した研究を複数のデータベースから検索しました。ROBINS-Iを用いてバイアスのリスクを評価し、ランダム効果メタ分析を行いました。2023年から2024年にかけての15件の研究を特定し、13件はAIが統計的に有意に高い共感評価を示しました。メタ分析では、AIが標準化平均差0.87(95% CI, 0.54-1.20)で優れていることが示されました。これらの研究はテキストベースの評価に依存しており、非言語的な要素を考慮していません。今後の研究では、患者の直接評価を通じてこれらの結果を検証し、音声対応AIシステムの共感力を評価する必要があります。

PECO:

  • P(対象): AIチャットボットと人間の医療専門家を比較する患者
  • E(暴露): AIチャットボット
  • C(比較): 人間の医療専門家
  • O(結果): 共感力の評価

一言: AIチャットボットは、医療専門家よりも高い共感力を示すことがあるとする研究が増えています。本研究では、AIと人間の共感力を比較し、AIが優れているとする結果が多く得られましたが、非言語的な要素は考慮されていません。

エビデンスレベル: 7/10
評価理由: 15件の研究を基にしたメタ分析であり、AIが共感力で優れているとする結果が多く得られましたが、非言語的要素が考慮されていないため、完全な結論には至っていません。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

AIチャットボットは、特にテキストベースのコミュニケーションにおいて、医療専門家よりも高い共感力を示すことがあるとされています。これは、患者とのコミュニケーションを改善し、医療の質を向上させる可能性があります。しかし、これらの研究は主にテキストベースで行われており、非言語的な要素や実際の患者との対話における共感力は評価されていません。日本の臨床現場においては、患者との対面でのコミュニケーションが重要視されるため、AIの導入には慎重な検討が必要です。また、AIの共感力が患者の満足度や治療結果にどのように影響するかをさらに研究する必要があります。音声対応AIシステムが今後の研究でどのような結果を示すかも注目されます。

(FAQ)

Q. AIチャットボットは本当に医療専門家よりも共感力が高いのですか?
A. 研究によれば、テキストベースの評価においてAIチャットボットは医療専門家よりも高い共感力を示すことがあります。しかし、非言語的な要素は考慮されておらず、実際の患者との対話での共感力はまだ十分に評価されていません。

Q. AIチャットボットの共感力が高いと、どんな利点がありますか?
A. AIチャットボットの高い共感力は、患者の不安を軽減し、満足度を向上させる可能性があります。これにより、医療の質が向上し、患者の治療体験が改善されることが期待されます。

Q. AIチャットボットは日本の医療現場でどのように活用されるべきですか?
A. 日本の医療現場では、対面でのコミュニケーションが重視されるため、AIチャットボットの導入には慎重な検討が必要です。特に、AIの共感力が実際の患者ケアにどのように役立つかをさらに研究する必要があります。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料