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(新着論文)小児歯科患者の不安軽減における行動指導技術の効果
原題: A systematic review and narrative synthesis of evidence from randomised controlled trials: the impact of behaviour guidance techniques on dental anxiety in paediatric patients.
Dhaliwal JK, Alzyood M, Al Rawashdeh R / BMC oral health / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
この系統的レビューは、6〜12歳の小児患者における歯科不安を軽減するための様々な行動指導技術(BGT)の効果を評価することを目的としています。2012年11月から2024年7月までに発表されたランダム化比較試験を対象に、PRISMAガイドラインに従ってレビューを実施しました。MEDLINE、EMBASE、Web of Science、PubMed、Cochrane Libraryを用いて関連研究を特定し、ナラティブシンセシスを用いて分析しました。18の研究が選定基準を満たし、様々なBGTが小児患者の歯科不安を効果的に軽減することが示されました。特に認知行動療法(CBT)は、分散や自己支援アプローチとして効果的であり、バーチャルリアリティ(VR)やビデオモデリング(VM)などの技術を用いた介入も効果的でした。鎮静も有効でしたが、副作用のリスクが低いCBTが好まれました。このレビューは、CBT、VR、アロマセラピーを含む様々なBGTが6〜12歳の子供の歯科不安を効果的に軽減することを示しています。特に技術と組み合わせたCBTは、心理的および身体的利益を提供し、リスクが少ない柔軟で効果的な方法でした。VRやアロマセラピーのような感覚介入は、患者の協力を促進する可能性があります。従来の方法であるTell-Show-Do(TSD)も効果的ですが、革新的で患者中心の技術が小児歯科ケアにおける変化を示しています。将来の研究では、費用対効果と多様な環境での適用可能性を優先すべきです。
PICO:
- P(対象): 6〜12歳の小児歯科患者
- I(介入): 行動指導技術(BGT)
- C(比較): 標準的な歯科診療、あるいは他の行動指導技術(TSD・視聴覚的分散・鎮静など)
- O(結果): 歯科不安の軽減
一言: このレビューは、6〜12歳の小児患者における歯科不安を軽減するための行動指導技術(BGT)の効果を評価しました。認知行動療法(CBT)やバーチャルリアリティ(VR)などの技術が特に効果的であることが示され、従来の方法に加えて新しいアプローチの重要性が示唆されました。
エビデンスレベル: 8/10
評価理由: このレビューは、ランダム化比較試験を基にした系統的レビューであり、信頼性の高いエビデンスを提供しています。多くの研究が一貫して効果を示しているため、実践に役立つ情報と考えられます。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
このレビューは、小児歯科における歯科不安を軽減するための行動指導技術(BGT)の有効性を示しています。特に認知行動療法(CBT)は、心理的および身体的な利益を提供し、副作用が少ないため、臨床での活用が推奨されます。バーチャルリアリティ(VR)やアロマセラピーなどの感覚介入は、患者の協力を促進する可能性があり、特に不安の強い患者に対して有効です。従来のTell-Show-Do(TSD)法も依然として有効ですが、新しい技術を取り入れることで、より患者中心のケアが可能になります。日本の臨床現場でも、これらの技術を取り入れることで、より良い患者体験を提供できるでしょう。ただし、各技術のコストや適用可能性については、さらなる研究が必要です。特に、技術の導入に伴う費用対効果や、異なる文化的背景を持つ患者への適用可能性についての検討が求められます。
(FAQ)
Q. 行動指導技術(BGT)とは何ですか?
A. 行動指導技術(BGT)は、患者の行動を導くための方法で、今回は小児患者の歯科不安を軽減するために用いられました。具体的には、今回のレビューで扱ったBGTには、従来型のTSDやモデリングに加えて、CBTベースの教材、VR、ビデオモデリング、アロマセラピー、催眠、バイオフィードバックなど複数の形態が含まれます。施設の設備やスタッフの専門性に合わせて選択できます。
Q. 認知行動療法(CBT)はどのように歯科不安を軽減しますか?
A. 認知行動療法(CBT)は、患者の思考や行動を変えることで不安を軽減する方法です。歯科治療中の不安を和らげるために、分散技術や自己支援アプローチが用いられ、心理的な安心感を提供します。
Q. バーチャルリアリティ(VR)はどのように歯科治療に役立ちますか?
A. バーチャルリアリティ(VR)は、患者を仮想環境に没入させることで、治療中の不安やストレスを軽減します。特に小児患者に対しては、治療への恐怖心を和らげ、協力的な態度を促進する効果があります。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
不安や悩みを抱えている方は開院後お気軽にご相談ください。当院スタッフが丁寧にサポートいたします。