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(新着論文)オランダ版GPSによるトラウマ関連症状の評価

原題: Assessing trauma-related symptomatology in the Netherlands: the Dutch Global Psychotrauma Screen (GPS).
Nava F, Broekman BFP, Olff M, Hoeboer CM / European journal of psychotraumatology / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:

多くの成人は人生で少なくとも一度は潜在的トラウマを経験していますが、PTSDなどの悪影響を受ける人々の多くが特定されず、治療を受けていません。このため、トラウマ関連障害のスクリーニングツールの改善が求められています。本研究では、オランダの成人を対象に、Global Psychotrauma Screen (GPS)のオランダ版の有効性と信頼性を評価しました。1377人のオランダ成人を対象にオンライン調査を実施し、一部の参加者にはPTSD、うつ病、不安の臨床的半構造化面接を行いました。オランダ版GPSは、内部整合性、収束的および発散的妥当性において良好な性能を示し、(複雑)PTSD、不安、うつ病のスクリーニングにおいて優れた性能を示しました。若年層、女性、失業中、精神疾患の既往歴、幼少期のトラウマ経験、低い社会的支援が高いGPS総症状スコアのリスク要因として特定されました。結論として、オランダ版GPSはPTSDや他のトラウマ関連障害の検出において有効かつ信頼できるツールであり、研究や臨床実践において幅広く活用できる価値があります。

PECO:

  • P(対象): オランダの成人(16歳以上)
  • E(暴露): オランダ版Global Psychotrauma Screen (GPS)
  • C(比較): 他の確立されたスクリーナー(PCL-5、GAD-7、PHQ-9)
  • O(結果): PTSD、不安、うつ病のスクリーニング性能

一言: 多くの成人が潜在的トラウマを経験していますが、PTSDなどの症状が見逃されることが多いです。本研究は、オランダ版Global Psychotrauma Screen (GPS)の有効性と信頼性を評価し、PTSDや不安、うつ病のスクリーニングにおいて優れた性能を示しました。

エビデンスレベル: 8/10

評価理由: 本研究は大規模なサンプルを用いており、オランダ版GPSの信頼性と妥当性を詳細に評価しています。結果は他の確立されたスクリーナーと比較しても優れた性能を示しており、臨床的に有用です。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

オランダ版GPSは、PTSDや他のトラウマ関連障害のスクリーニングにおいて有効かつ信頼できるツールです。特に、簡便に実施できるため、臨床現場での初期評価や研究において幅広く活用できます。日本の臨床現場においても、同様のスクリーニングツールが求められており、オランダ版GPSの結果は参考になります。ただし、文化的背景や言語の違いを考慮する必要があります。日本での適用には、適切な翻訳と文化的適応が必要です。また、スクリーニング結果は診断の一助として用いるべきであり、最終的な診断は専門家による詳細な評価が必要です。特に、若年層や女性、失業中の人々、精神疾患の既往歴がある人々は高リスク群として注意が必要です。社会的支援の強化も重要な要素となります。

(FAQ)

Q. オランダ版GPSはどのような人に適していますか?
A. オランダ版GPSは、16歳以上の成人を対象にしており、PTSDや不安、うつ病のスクリーニングに適しています。特に、トラウマを経験した可能性のある人々や、精神的健康に不安を抱える人々に有用です。

Q. オランダ版GPSの結果はどのように活用されますか?
A. オランダ版GPSの結果は、PTSDや他のトラウマ関連障害の初期スクリーニングとして活用されます。結果は診断の一助として用いられ、最終的な診断は専門家による詳細な評価が必要です。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料