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(新着論文)気候変動が脆弱な集団のメンタルヘルスに与える影響

原題: The impact of climate change on mental health in vulnerable groups: a systematic review.
Mahmood R, Clery P, Yang JC, Cao L, Dykxhoorn J / BMC psychology / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:
気候変動は、低所得層、少数民族、先住民、住居不安定な集団などの脆弱なグループに不均等に影響を与え、既存の社会的不平等を悪化させる可能性があります。本系統的レビューでは、これらの集団における気候変動のメンタルヘルスへの影響を調査しました。2023年7月17日以前に発表された研究を対象に、MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、Scopus、Web of Scienceを検索しました。1,197件の論文のうち、32件が基準を満たしました。多くの研究は急性の気象イベントを調査し、低所得層や少数民族に焦点を当てていましたが、先住民や住居不安定な集団に関する研究は限られていました。主なメンタルヘルスの結果は、心的外傷後ストレス障害、うつ病、不安障害、心理的苦痛などでした。脆弱な集団は、気候変動にさらされた後、他の集団よりも悪化したメンタルヘルスの結果を経験することが多かったが、一部の研究では混合または無影響の結果も報告されました。これらのギャップを埋めることは、気候変動の影響を理解し、効果的な公衆衛生政策を策定するために重要です。

PECO:

  • P(対象): 脆弱な集団(低所得層、少数民族、先住民、住居不安定な集団)
  • E(暴露): 気候変動イベントへの曝露
  • C(比較): 他の集団
  • O(結果): メンタルヘルスの悪化(心的外傷後ストレス障害、うつ病、不安障害、心理的苦痛)

一言: 気候変動は、低所得層や少数民族、先住民、住居不安定な集団などの脆弱なグループに不均等に影響を与え、既存の社会的不平等を悪化させる可能性があります。本研究は、これらの集団における気候変動のメンタルヘルスへの影響を系統的にレビューしました。

エビデンスレベル: 7/10

評価理由: 多くの研究が脆弱な集団における気候変動のメンタルヘルスへの影響を示しているが、研究の質や対象集団の偏りがあり、結果の一貫性に欠ける部分もあるため、さらなる研究が必要です。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

気候変動がメンタルヘルスに与える影響は、特に脆弱な集団において顕著であることが示されています。臨床現場では、これらの集団に対する支援が重要です。特に、心的外傷後ストレス障害やうつ病、不安障害のリスクが高まる可能性があるため、早期の介入や予防策が求められます。しかし、研究の多くが高所得国を対象としており、低中所得国や先住民、住居不安定な集団に関するデータは限られています。日本においても、気候変動の影響を受けやすい地域や集団に対する特別な配慮が必要です。さらに、気候変動の影響は長期的かつ多面的であるため、包括的なアプローチが求められます。今後の研究では、これらのギャップを埋めることが重要です。

(FAQ)

Q. 気候変動はどのようにメンタルヘルスに影響を与えるのですか?
A. 気候変動は、急激な気象変化や自然災害を通じて、ストレスや不安を引き起こし、心的外傷後ストレス障害やうつ病、不安障害などのメンタルヘルス問題を悪化させる可能性があります。特に脆弱な集団では、その影響が顕著です。

Q. どのような集団が気候変動の影響を受けやすいですか?
A. 低所得層、少数民族、先住民、住居不安定な集団などが、気候変動の影響を受けやすいとされています。これらの集団は、既存の社会的不平等により、気候変動によるメンタルヘルスの悪化リスクが高まる可能性があります。

Q. 日本での気候変動のメンタルヘルスへの影響は?
A. 日本でも、気候変動による自然災害が増加しており、特に高齢者や低所得層などの脆弱な集団において、メンタルヘルスへの影響が懸念されています。地域社会や医療機関による支援が重要です。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料