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(新着論文)医療従事者のストレス軽減におけるVR体験の効果

原題: Virtual Reality Experience to Relieve Stress, Burnout, Fatigue, and Anxiety in Healthcare Professionals: A Systematic Review.
Desai S, Rath C, Bhandarkar N, Jape G, Rao S / Journal of healthcare management / American College of Healthcare Executives / 2025 Nov-Dec 01 / DOI / PubMed

抄訳:

医療従事者は長時間勤務により身体的、感情的、心理的ストレスを受けやすく、特にCOVID-19パンデミックによりその影響は増大しています。この問題を軽減するために、VRを用いた新しい介入が試みられていますが、研究の臨床設定やメンタルヘルス関連の評価尺度、サンプルサイズなどにばらつきがあります。本研究では、医療従事者のストレス、燃え尽き症候群、疲労、不安を軽減するためのVR介入の実現可能性と効果を検討するため、系統的レビューを実施しました。2023年9月と2024年2月に主要データベースを検索し、EPHPP品質評価ツールを用いてバイアスのリスクを評価しました。最終分析には1,422件の引用のうち17件の研究が含まれ、参加者数は14人から219人(合計1,053人)でした。7件はランダム化比較試験で、残りは事前事後介入研究でした。研究の異質性のためメタ解析は実施できませんでした。EPHPPツールに基づき、1件が強い評価、2件が中程度、14件が弱い評価でした。VR介入は医療従事者のストレス軽減に有用である可能性がありますが、高品質な研究が限られているため、解釈には注意が必要です。

PECO:

  • P(対象): 長時間勤務する医療従事者
  • E(暴露): VRを用いたストレス軽減介入
  • C(比較): VR介入を行わない通常の休憩
  • O(結果): ストレス、燃え尽き症候群、疲労、不安の軽減

一言: 医療従事者のストレスや燃え尽き症候群を軽減するために、VRを用いた介入が試みられていますが、研究の質や結果にはばらつきがあります。高品質な研究が少ないため、結果の解釈には注意が必要です。

確かさ(GRADE): 低い
理由: 研究の質が全体的に低く、結果のばらつきが大きいため、確信度は低いとされています。高品質な研究が少ないことが主な理由です。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

VRを用いた介入は、医療従事者のストレスや燃え尽き症候群を軽減する可能性がありますが、研究の質が低いため、結果の解釈には注意が必要です。日本の臨床現場での適用には、さらなる高品質な研究が必要です。VR技術の導入にはコストや設備の問題も考慮する必要がありますが、効果的なストレス管理の一環として検討する価値があります。特に、長時間勤務が常態化している医療現場では、休憩時間を活用したVR介入が有効である可能性があります。今後の研究では、より大規模で質の高いランダム化比較試験が求められます。

(FAQ)

Q. VRは医療従事者のストレス軽減に効果的ですか?
A. VRは医療従事者のストレス軽減に一定の効果があるとされていますが、研究の質にばらつきがあるため、効果の確実性には注意が必要です。一般的に、ストレス管理には多様な方法があり、個々の状況に応じた適切な方法を選ぶことが重要です。ストレスが続く場合は、専門家に相談することをお勧めします。

Q. 医療従事者のストレス管理にはどのような方法がありますか?
A. 医療従事者のストレス管理には、休息の確保、運動、メンタルヘルスサポートの利用などがあります。ガイドラインでは、定期的な休息と健康的なライフスタイルの維持が推奨されています。個々の状況に応じた方法を選ぶことが重要で、必要に応じて専門家の助言を受けることが推奨されます。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料