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(新着論文)母体の葉酸補給が子供の神経発達障害に与える影響

原題: The Effect of Maternal Folic Acid Supplementation on Neurodevelopmental Disorders in Offspring: An Umbrella Review of Systematic Reviews and Meta-Analyses.
Yu M, Hu Y, Hou L, Wu X, Chen X, Yan R, Dong J, Wu J / Nutrients / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:

母体の葉酸補給は神経管閉鎖障害の予防に推奨されていますが、子供の神経発達障害(NDDs)への影響は不明です。本アンブレラレビューは、妊娠前および妊娠中の葉酸補給がNDDsのリスクに与える影響を評価することを目的としています。MEDLINE、Cochrane Library、EMBASE、PubMed、Web of Scienceを用いて、母体の葉酸補給とNDDsに関する系統的レビュー(SRs)およびメタアナリシス(MAs)を特定しました。AMSTAR-2評価を用いて方法論的質を評価し、GRADEフレームワークを用いて証拠の確実性を評価しました。合計23のSRs/MAsが含まれ、そのうち14はメタアナリシスを行っていませんでした。含まれたSRs/MAsの多くは方法論的に限界があり、50.00%が非常に低い質と評価され、36.37%のみが高または中程度の質を達成しました。メタアナリシスは、葉酸補給が自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、行動問題に対して保護効果を示すことを示しましたが、運動、知的/認知、言語発達に対する有意な関連は見られませんでした。SRsはほとんどのアウトカムで一貫性のない結論を報告しました。結論として、母体の葉酸補給はASD、ADHD、行動問題のリスクを低下させる可能性がありますが、現在の証拠の質は低く、さらなる研究が必要です。

PECO:

  • P(対象): 妊娠前および妊娠中の女性
  • E(暴露): 葉酸補給(推奨用量に基づく)
  • C(比較): 葉酸を補給しない女性
  • O(結果): 子供の自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害、行動問題の発生率

一言: 母体の葉酸補給は神経管閉鎖障害の予防に推奨されていますが、子供の神経発達障害への影響は不明です。本レビューは、妊娠前および妊娠中の葉酸補給が神経発達障害のリスクに与える影響を評価しました。結果、葉酸補給は自閉症スペクトラム障害や注意欠陥・多動性障害、行動問題のリスクを低下させる可能性がありますが、証拠の質は低いです。

確かさ(GRADE): 低い
理由: この研究の証拠の質は低く、結果のばらつきや方法論的限界が影響しています。さらなる研究が必要です。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

母体の葉酸補給は、神経管閉鎖障害の予防において確立された効果がありますが、子供の神経発達障害に対する影響はまだ不明確です。本レビューでは、葉酸補給が自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害、行動問題のリスクを低下させる可能性が示唆されていますが、証拠の質は低く、結論には慎重さが求められます。日本の臨床現場では、妊娠を計画している女性に対して葉酸補給が推奨されており、神経管閉鎖障害の予防においてはその有効性が確認されています。神経発達障害に関する影響については、さらなる研究が必要であり、現時点では確立されたガイドラインに従うことが重要です。医療従事者は、患者に対して葉酸補給の利点と限界を説明し、個別の状況に応じたアドバイスを行うべきです。

(FAQ)

Q. 葉酸補給はなぜ妊娠前から推奨されるのですか?
A. 葉酸補給は神経管閉鎖障害の予防に効果的であるため、妊娠前からの摂取が推奨されています。神経管は妊娠初期に形成されるため、妊娠前からの葉酸摂取が重要です。日本産科婦人科学会などのガイドラインに基づき、妊娠を計画している女性は葉酸を適切に摂取することが推奨されています。

Q. 葉酸補給はどのくらいの量が必要ですか?
A. 一般的に、妊娠を計画している女性は1日400マイクログラムの葉酸を摂取することが推奨されています。これは神経管閉鎖障害の予防に効果的な量です。日本の栄養ガイドラインに従い、サプリメントや葉酸を多く含む食品から摂取することが推奨されます。個別の健康状態に応じて、医師と相談することが重要です。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料