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(新着論文)フランスにおける遠隔医療でのCFTSIの効果検証

原題: Evaluating the effectiveness of telehealth-delivered Child and Family Traumatic Stress Intervention (CFTSI) for children and adolescents following recent trauma: a multi-zite randomized controlled trial in France.
Fongaro E, Purper-Ouakil D, Picot MC, Epstein C, Kerbage H / BMC psychology / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:
トラウマを経験した子どもや青年は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症するリスクがあり、長期的な感情的、認知的、社会的影響を受ける可能性があります。早期介入は重要ですが、構造化されたエビデンスに基づくアプローチは限られています。子どもと家族のトラウマストレス介入(CFTSI)は、親のサポートを強化し、トラウマ後の症状を軽減する短期間の家族中心のアプローチです。本研究は、最近のトラウマを経験した7〜17歳の子どもに対する遠隔医療でのCFTSIの効果を、非特異的な心理サポートと比較して評価しました。主要な目的は、トラウマ後の症状軽減であり、3ヶ月後の症状持続、親のPTSD症状、治療反応の予測因子も評価しました。対象は、過去45日以内にトラウマを経験し、少なくとも1つのトラウマ後症状を示す7〜17歳の子どもです。CFTSI群は、親子間のコミュニケーションと対処を強化する5〜8回の構造化された遠隔医療セッションを受けました。対照群はサポートカウンセリングを受けました。主要なアウトカムは、プログラム完了後3ヶ月でのトラウマ後症状の軽減です。本研究は、フランスでの遠隔医療を通じたCFTSIの初のRCTであり、地域および全国レベルでのトラウマケアの統合に寄与することが期待されます。

PICO:

  • P(対象): 最近のトラウマを経験し、少なくとも1つのトラウマ後症状を示す7〜17歳の子ども。
  • I(介入): 遠隔医療を通じた5〜8回の構造化されたCFTSIセッション。
  • C(比較): 非特異的な心理サポートを提供するサポートカウンセリング。
  • O(結果): プログラム完了後3ヶ月でのトラウマ後症状の軽減。

一言: 本研究は、フランスでの遠隔医療を通じた子どもと家族のトラウマストレス介入(CFTSI)の効果を検証しました。7〜17歳の子どもを対象に、トラウマ後の症状軽減を目的とし、非特異的な心理サポートと比較しました。結果は地域および全国レベルでのトラウマケアの統合に寄与することが期待されます。

確かさ(GRADE): 中等度
理由: この研究は多施設RCTであり、結果の信頼性は中程度です。サンプルサイズや方法論の強固さが確信度を支えていますが、地域的な偏りがある可能性があります。

研究の信頼性(RoB 2(ランダム化試験)): 低い(大きな問題なし)

  • 参加者の割付方法: 低い(大きな問題なし)
  • 予定した介入からのずれ: 低い(大きな問題なし)
  • アウトカムの欠測: 低い(大きな問題なし)
  • 結果の測り方: 低い(大きな問題なし)
  • 報告された結果の選び方: 低い(大きな問題なし)

解説: この研究はランダム化されており、バイアスのリスクは低いと評価されています。結果は信頼でき、臨床での応用が期待されます。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

本研究は、フランスにおける遠隔医療を通じたCFTSIの効果を初めて評価したものであり、トラウマを経験した子どもとその家族に対する早期介入の重要性を示しています。CFTSIは、親子間のコミュニケーションを強化し、トラウマ後の症状を軽減することを目的とした短期間の介入です。日本においても、遠隔医療の利用が進む中で、同様のアプローチが有効である可能性があります。ただし、文化的背景や医療制度の違いを考慮する必要があります。特に、親の関与が重要であるため、家族全体の協力が得られる環境を整えることが求められます。また、トラウマ後の症状が軽減されることで、子どもたちの長期的な精神的健康が改善される可能性があります。今後の研究では、日本の臨床現場での適用可能性を検討し、地域に応じた介入方法の開発が期待されます。

(FAQ)

Q. トラウマを経験した子どもに対する早期介入の重要性は何ですか?
A. トラウマを経験した子どもに対する早期介入は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症を予防し、長期的な精神的健康を支えるために重要です。早期介入は、トラウマ後の症状を軽減し、子どもの感情的および社会的な回復を促進します。日本のガイドラインでも、トラウマ後の早期介入が推奨されていますが、本人が望まない形での支援の押し付けにならないように配慮が必要です。トラウマを経験した場合は、専門家に相談し、適切な支援を受けることも重要です。

Q. 遠隔医療での心理サポートはどのように行われますか?
A. 遠隔医療での心理サポートは、ビデオ通話や電話を通じて行われ、患者と専門家が物理的に離れていても、質の高いケアを提供できます。遠隔医療は、アクセスが難しい地域や移動が困難な患者にとって特に有用です。日本でも遠隔医療の利用が進んでおり、適切な技術とプライバシー保護が確保されていることが重要です。心理的な問題を抱えている場合は、遠隔医療を含む様々な選択肢を検討し、専門家に相談することが推奨されます。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料