最新の研究から、外来の皆さまに役立つ知見を簡潔にご紹介します。
(新着論文)中国の看護師におけるBMIと抑うつ症状の関連性
原題: Body mass index and depressive symptoms among Chinese nurses: A cross-sectional study.
Wang Y, Cui X, Lu Y, Fu C / Medicine / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
看護職において抑うつ症状は一般的であり、正常な体格指数(BMI)は健康の重要な指標です。しかし、看護師における抑うつ症状とBMIの関連性を調査した研究は少ないです。本研究は、中国の看護師を対象にその関連性を調査しました。山東省の12の三次病院から1866人の看護師が調査に参加しました。BMIは身長と体重を測定して算出し、抑うつ症状は10項目の疫学研究センター抑うつ尺度を用いて評価しました。BMIと抑うつ症状の関係は多変量ロジスティック回帰分析で解析されました。中国の看護師における抑うつ症状の有病率は47.8%でした。多変量ロジスティック回帰分析の結果、正常範囲のBMIを持つ参加者と比較して、痩せ型(オッズ比=1.670, 95%信頼区間: 1.161-2.403)や肥満(オッズ比=1.540, 95%信頼区間: 1.003-2.365)の参加者は抑うつ症状と正の関連があり、過体重の参加者は有意な関連がありませんでした。年齢、教育背景、職位、月収、所属部署が抑うつ症状に影響を与える要因として特定されました。病院管理者は、看護師が正常なBMIを維持することを奨励し、抑うつ症状の改善に寄与する要因に注目する効果的な対策を講じるべきです。
PECO:
- P(対象): 中国の三次病院に勤務する1866人の看護師
- E(暴露): BMIが正常範囲外(痩せ型または肥満)
- C(比較): BMIが正常範囲内
- O(結果): 抑うつ症状の有無(10項目の疫学研究センター抑うつ尺度で評価)
一言: 中国の看護師を対象に、BMIと抑うつ症状の関連性を調査した結果、痩せ型や肥満の看護師は正常体重の看護師よりも抑うつ症状を抱える可能性が高いことが示されました。年齢や教育背景、職位、収入、所属部署も抑うつ症状に影響を与える要因として特定されました。
確かさ(GRADE): 中等度
理由: この研究は観察研究であり、因果関係を直接示すものではありませんが、大規模なサンプルサイズと多変量解析により、結果の信頼性は中程度と評価されます。
研究の信頼性(ROBINS-I(非ランダム化研究)): やや懸念
- 交絡: やや懸念
- 参加者の選び方: 低い(大きな問題なし)
- 介入の分類: 低い(大きな問題なし)
- 予定した介入からのずれ: 低い(大きな問題なし)
- 欠測(全般): やや懸念
- アウトカム測定: 低い(大きな問題なし)
- 報告された結果の選び方: やや懸念
解説: この研究は観察研究であり、因果関係を示すものではありませんが、サンプルサイズが大きく、結果の信頼性は中程度です。いくつかのバイアスの可能性があるため、結果の解釈には注意が必要です。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
この研究は、中国の看護師を対象にBMIと抑うつ症状の関連性を調査したものです。結果として、痩せ型や肥満の看護師は正常体重の看護師よりも抑うつ症状を抱える可能性が高いことが示されました。日本の臨床現場においても、看護師の心身の健康管理は重要であり、特にBMIが正常範囲外の看護師に対しては、メンタルヘルスのサポートが必要です。また、年齢や教育背景、職位、収入、所属部署が抑うつ症状に影響を与える要因として特定されているため、個々の看護師の状況に応じた支援が求められます。病院管理者は、看護師が健康的なBMIを維持するためのプログラムを導入し、抑うつ症状の改善に寄与する要因に注目することが推奨されます。日本の看護師においても、同様の調査を行い、文化的・社会的背景を考慮した対策を講じることが重要です。
(FAQ)
Q. 看護師の抑うつ症状はどのように予防できますか?
A. 抑うつ症状の予防には、適切なストレス管理とメンタルヘルスのサポートが重要です。日本精神神経学会のガイドラインでは、定期的な運動、十分な睡眠、職場でのサポート体制の強化が推奨されています。看護師も、過度なストレスを感じた場合には、早めに専門家に相談することが大切です。
Q. BMIが健康に与える影響はどのようなものですか?
A. BMIは体重と身長から算出される指標で、健康状態の目安となります。日本肥満学会のガイドラインによれば、正常範囲のBMIは心血管疾患や糖尿病のリスクを低減します。BMIが高すぎると肥満関連疾患のリスクが増加し、低すぎると栄養不良のリスクが高まります。定期的な健康診断でBMIを確認し、適切な体重管理を行うことが推奨されます。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
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