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(新着論文)子どもと青年のうつ症状改善に最適な有酸素運動量の検討

原題: Optimal dose of aerobic exercise for reducing depressive symptoms in children and adolescents: A meta-analysis of randomized controlled trials and dose-response analysis.

Wang J, Chen L, Liang Y, Chen T, Yuan Y, Yang Y, Fang H, Xie T, Zhuang J / Journal of affective disorders / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:

このメタ分析は、子どもと青年(6〜19歳)のうつ症状を改善するための最適な有酸素運動プログラムを特定し、運動量と効果の関係を探ることを目的としています。2024年9月までのPubMed、MEDLINE、Embase、CENTRAL、Web of Scienceを用いた系統的検索により、18件のランダム化比較試験(RCT)が選定され、1540名の参加者が含まれました。結果は標準化平均差(SMD)と95%信頼区間(CI)で評価されました。有酸素運動は介入後(SMD: -0.37, 95% CI: -0.59 to -0.15)およびフォローアップ期間中(SMD: -0.51, 95% CI: -0.85 to -0.18)にうつ症状を有意に軽減しました。特に、臨床的に診断されたうつ病の青年において効果が強く、中等度の強度(4.0-5.9 METs)、1回30-45分、週3-4回、6-10週間の運動が最も効果的であることが示されました。最適な運動量は590 METs-分/週であり、効果的な範囲は360-780 METs-分/週でした。これらの知見は、ターゲットを絞った介入の設計に実用的な洞察を提供します。

PICO:

  • P(対象): 6〜19歳の子どもと青年
  • I(介入): 中等度の強度の有酸素運動(4.0-5.9 METs)、1回30-45分、週3-4回、6-10週間
  • C(比較): 運動を行わない、または異なる運動プログラム
  • O(結果): うつ症状の軽減

一言: この研究は、子どもと青年におけるうつ症状を改善するための最適な有酸素運動量を特定することを目的としています。18件のランダム化比較試験を分析し、特に臨床的に診断されたうつ病の青年において、中等度の強度で週3〜4回、6〜10週間の運動が効果的であることが示されました。

エビデンスレベル: 8/10

評価理由: この研究は18件のランダム化比較試験を基にしており、信頼性の高い結果を提供しています。特に、臨床的に診断されたうつ病の青年において効果が確認されているため、実用的な介入に役立つ情報です。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

この研究は、子どもと青年におけるうつ症状の改善に有酸素運動が有効であることを示しています。特に、臨床的に診断されたうつ病の青年において、中等度の強度で週3〜4回、6〜10週間の運動が効果的であることが確認されました。日本の臨床現場でも、運動療法はうつ病の治療において補助的な役割を果たしており、この研究の結果はその実践を裏付けるものです。ただし、運動の強度や頻度は個々の患者の状態に応じて調整する必要があります。また、運動療法を導入する際には、医療専門家の指導の下で行うことが推奨されます。さらに、運動が全ての患者に適しているわけではないため、他の治療法との組み合わせも考慮する必要があります。外的妥当性については、異なる文化的背景や生活習慣を持つ日本の子どもと青年にも適用可能かどうかを慎重に評価する必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q. どのくらいの運動がうつ症状に効果的ですか?

A. 中等度の強度(4.0-5.9 METs)の有酸素運動を1回30-45分、週3-4回、6-10週間行うことが効果的です。最適な運動量は590 METs-分/週とされています。

Q. この研究の結果は日本でも適用できますか?

A. 日本の臨床現場でも運動療法はうつ病治療に用いられていますが、文化的背景や生活習慣の違いを考慮し、個々の患者に合わせた調整が必要です。

Q. 運動療法は全てのうつ病患者に適していますか?

A. 運動療法は多くの患者に有効ですが、全ての患者に適しているわけではありません。医療専門家の指導の下で、他の治療法と組み合わせて行うことが推奨されます。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。精神保健指定医 児玉啓輔
監修者プロフィール

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