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(新着論文)COVID-19影響下の心理社会的介入の効果と離脱率の比較

原題: Comparative Efficacy and Attrition Rates of Psychosocial Interventions for Individuals Affected by the COVID-19 Pandemic: A Network Meta-Analysis.
Li Y, Liu X, Guo Z, Lai L, Bryant RA, Zhang T, Song H, Mi T, Ren Z / Stress and health : journal of the International Society for the Investigation of Stress / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:

COVID-19パンデミックの心理的影響に対する心理社会的介入の効果と離脱率の比較研究は限られています。本研究では、COVID-19の影響を受けた個人に対する心理社会的介入の効果と離脱率を検討しました。COVID-19影響下のグループを対象としたランダム化比較試験を特定するために系統的検索を行い、不安、抑うつ、ストレス症状、および離脱率に関するデータを頻度主義ランダム効果ネットワークメタ解析を用いて分析しました。142の研究、20,470人の参加者が含まれました。感情解放技法、アートセラピー、ストレス管理、マインドフルネス・アクセプタンスベースの介入、ポジティブ心理療法、ヨガ療法、認知行動療法は、無治療および通常治療と比較して不安症状の軽減に有意な効果を示しました。抑うつ症状に対しては、ポジティブ心理療法、マインドフルネス・アクセプタンスベースの介入、認知行動療法、ヨガ療法が無治療または通常治療よりも有意に優れており、ポジティブ心理療法は表現的ライティングをも上回りました。ストレス症状に関しては、多成分療法とヨガ療法が無治療よりも大きな改善をもたらし、ポジティブ心理療法は表現的ライティングを上回りました。離脱率に関しては、レジリエンストレーニング、アートセラピー、ヨガ療法が無治療および他のいくつかの介入よりも高い離脱率を示しました。感度分析は主な結果の堅牢性を確認し、信頼性は中程度から非常に低い範囲でした。出版バイアスは観察されませんでした。本研究は、COVID-19影響下の個人における精神的健康症状の軽減における複数の心理社会的介入の効果と離脱率を明らかにし比較しています。

PICO:

  • P(対象): COVID-19パンデミックの影響を受けた個人。
  • I(介入): 感情解放技法、アートセラピー、ストレス管理、マインドフルネス・アクセプタンスベースの介入、ポジティブ心理療法、ヨガ療法、認知行動療法。
  • C(比較): 無治療および通常治療。
  • O(結果): 不安、抑うつ、ストレス症状の軽減および離脱率。

一言: COVID-19パンデミックの影響を受けた人々に対する心理社会的介入の効果と離脱率を比較した研究です。142のランダム化比較試験を分析し、特定の介入が不安、抑うつ、ストレス症状の軽減に有効であることが示されました。離脱率も評価され、介入の選択に役立つ情報を提供しています。

確かさ(GRADE): 中等度

理由: この研究は多くのランダム化比較試験を含んでおり、結果は一貫しているが、信頼性は中程度から非常に低い範囲であるため、確信度は中程度とされます。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

COVID-19パンデミックの影響を受けた個人に対する心理社会的介入の効果を評価したこの研究は、臨床現場での介入選択に役立つ情報を提供します。特に不安、抑うつ、ストレス症状の軽減において、特定の介入が有効であることが示されました。日本の臨床現場でも、これらの介入は既に広く用いられており、今後の公衆衛生危機においても参考になる可能性があります。ただし、離脱率が高い介入もあるため、患者の特性やニーズに応じた介入の選択が重要です。また、研究の信頼性は中程度であるため、他のエビデンスと併せて慎重に判断する必要があります。

(FAQ)

Q. 心理社会的介入とは何ですか?
A. 心理社会的介入は、心理的および社会的な要因に働きかける治療法で、精神的健康の改善を目指します。ガイドラインでは、認知行動療法やマインドフルネスなどが推奨されています。これらの介入は、ストレスや不安、抑うつの軽減に効果的とされています。

Q. COVID-19の影響で精神的健康が悪化した場合、どのような介入が有効ですか?
A. COVID-19の影響で精神的健康が悪化した場合、認知行動療法やマインドフルネス、ヨガ療法などが有効とされています。これらの介入は、ガイドラインで推奨されており、ストレスや不安、抑うつの軽減に役立ちます。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

患者さんへのメッセージ

不安や悩みを抱えている方は開院後お気軽にご相談ください。当院スタッフが丁寧にサポートいたします。

参考リンク・関連資料