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(新着論文)マインドフルネス介入の周産期気分障害と新生児への効果

原題: Efficacy of mindfulness-based interventions on perinatal mood disorders and neonatal outcomes: a systematic review and meta-analysis.
Fu Y, Wang Y, Zhu Z, Zhang D / Journal of psychosomatic obstetrics and gynaecology / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:
このメタ解析は、マインドフルネスに基づく介入が周産期のうつ病、不安、ストレス、マインドフルネス、そして新生児のアウトカムに与える効果を評価することを目的としました。国内外のデータベースを系統的に検索し、マインドフルネス介入を評価するランダム化比較試験(RCT)を特定しました。評価指標には、エジンバラ産後うつ病尺度(EPDS)、自己評価うつ病尺度(SDS)、自己評価不安尺度(SAS)、知覚ストレス尺度(PSS)、五要素マインドフルネス質問票(FFMQ)、およびアプガースコアが含まれました。標準化平均差(SMD)を計算し、異質性をI²値で評価しました。790件の文献を特定し、9件の研究(1024人の参加者を含む)が含まれました。うつ病(EPDS: SMD = -1.63, p > 0.05)やストレス(PSS: SMD = -1.92, p > 0.05)には有意な効果は見られませんでしたが、不安(SAS: SMD = -0.64, p < 0.05)と新生児のアウトカム(アプガースコア: SMD = 0.87, p < 0.05)には有意な改善が見られました。マインドフルネスには有意な差はありませんでした(FFMQ: SMD = 2.27, p > 0.05)。多くのアウトカムで高い異質性が観察されました。マインドフルネスに基づく介入は不安を有意に軽減し、新生児のアウトカムを改善しますが、うつ病、ストレス、マインドフルネスへの効果にはさらなる研究が必要です。

PICO:

  • P(対象): 周産期の女性、特に妊娠中または産後の女性
  • I(介入): マインドフルネスに基づく介入、具体的には瞑想や意識的な呼吸法
  • C(比較): 通常のケアまたは他の非マインドフルネス介入
  • O(結果): うつ病、不安、ストレス、マインドフルネスの改善、新生児のアプガースコア

一言: このメタ解析は、マインドフルネスに基づく介入が周産期のうつ病、不安、ストレス、マインドフルネス、そして新生児のアウトカムに与える効果を評価しました。結果として、不安の軽減と新生児のアウトカム改善に有意な効果が見られましたが、うつ病やストレス、マインドフルネスへの効果は不明確であり、さらなる研究が必要です。

確かさ(GRADE): 中等度
理由: 研究の数は限られており、結果に異質性が見られましたが、不安と新生児アウトカムに対する効果は一貫していました。さらなる研究が必要です。

研究の信頼性(RoB 2(ランダム化試験)): やや懸念

  • 参加者の割付方法: 低い(大きな問題なし)
  • 予定した介入からのずれ: やや懸念
  • アウトカムの欠測: 低い(大きな問題なし)
  • 結果の測り方: やや懸念
  • 報告された結果の選び方: やや懸念

解説: この研究はランダム化比較試験を対象としており、全体的に信頼性はありますが、いくつかの領域で懸念が残ります。特に、介入の偏りや結果の選択に関する懸念があります。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

この研究は、マインドフルネスに基づく介入が周産期の不安を軽減し、新生児の健康状態を改善する可能性を示しています。特に、不安の軽減と新生児のアプガースコアの改善が確認されました。しかし、うつ病やストレス、マインドフルネスの改善については、結果が一貫しておらず、さらなる研究が必要です。日本の臨床現場においても、マインドフルネスは補完的な治療法として考慮されるべきですが、個々の患者の状況に応じた適切な評価と組み合わせが重要です。特に、妊娠中や産後の女性に対しては、医療専門家の指導の下で安全に実施されるべきです。外的妥当性については、文化的背景や個人差を考慮する必要があります。

(FAQ)

Q. マインドフルネスはどのように不安を軽減するのですか?
A. マインドフルネスは、現在の瞬間に意識を集中させることで、不安を軽減する効果があります。日本精神神経学会のガイドラインによれば、マインドフルネスはストレス管理や精神的健康の改善に役立つとされています。ただし、効果は個人差があり、専門家の指導の下で行うことが推奨されます。

Q. 新生児のアプガースコアとは何ですか?
A. アプガースコアは、新生児の健康状態を評価するための指標で、心拍数、呼吸、筋緊張、反応性、皮膚色の5項目を評価します。アプガースコアは出生直後の新生児の状態を迅速に把握するために用いられます。スコアが低い場合は、医療的介入が必要となることがあります。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

患者さんへのメッセージ

不安や悩みを抱えている方は開院後お気軽にご相談ください。当院スタッフが丁寧にサポートいたします。

参考リンク・関連資料