最新の研究から、外来の皆さまに役立つ知見を簡潔にご紹介します。
(新着論文)若者向けオンラインソーシャルセラピーのパイロット研究
原題: Moderated Online Social Therapy (MOST) in Help-Seeking Young People: Pilot Randomized Controlled Study.
Dwan-O’Reilly M, Harrington SM, Gavin C, Godfrey E, Cowman M, Gleeson C, O’Mahony-Sinnott A, McCormack J, Frawley E, Burke T, O’Connor K, Birchwood M, Heary C, Alvarez-Jimenez M, Donohoe G / Journal of medical Internet research / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
若者のメンタルヘルス支援の需要が急増する中、デジタルメンタルヘルス介入は結果を改善し、アクセスを促進する可能性があります。特に、大学生に対する支援として、学生カウンセリングを待つ間や対面カウンセリング後の効果維持に役立つ可能性があります。オンライン介入「MOST」は、個別の心理療法コンテンツとセラピストやピアサポート、オンラインコミュニティを組み合わせたものです。本研究では、大学生のメンタルヘルス支援にMOSTを利用することの実現可能性を検討しました。大学のカウンセリングサービスを最近受けた学生を対象に、パイロットランダム化比較試験を実施しました。学生は介入群と対照群に2:1の割合で無作為に割り当てられ、介入群は26週間MOSTにアクセスできました。社会的および職業的機能、認知機能、うつ病、不安、孤独感を評価しました。74名の参加者が募集され、12週目の試験保持率は70%、26週目は66%でした。介入群の81%が5週間以上参加し、社会的および認知機能の改善が見られました。これらの結果から、大学生を対象としたMOSTの完全なランダム化比較試験が実現可能であることが示唆されました。
PICO:
- P(対象): 大学のカウンセリングサービスを最近受けた若者
- I(介入): オンラインソーシャルセラピー(MOST)への26週間のアクセス
- C(比較): 通常のケア
- O(結果): 社会的および認知機能の改善、臨床症状の軽減
一言: 若者のメンタルヘルス支援の需要が急増する中、デジタルメンタルヘルス介入は結果を改善し、アクセスを促進する可能性があります。本研究は、大学生を対象にオンラインセラピー「MOST」の有効性を試験的に検討しました。結果、社会的および認知機能の改善が見られ、完全な試験の実施が可能であることが示唆されました。
確かさ(GRADE): 中等度
理由: この研究はパイロット試験であり、参加者数が限られているため、結果の一般化には注意が必要です。しかし、結果は他の研究と一致しており、さらなる研究の価値を示しています。
研究の信頼性(RoB 2(ランダム化試験)): やや懸念
- 参加者の割付方法: 低い(大きな問題なし)
- 予定した介入からのずれ: やや懸念
- アウトカムの欠測: 低い(大きな問題なし)
- 結果の測り方: やや懸念
- 報告された結果の選び方: 低い(大きな問題なし)
解説: この研究はランダム化比較試験であり、いくつかのバイアスのリスクは低いですが、介入の偏りや結果の選択に関する懸念が残ります。結果は慎重に解釈する必要があります。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
MOSTは、大学生のメンタルヘルス支援において有望なデジタル介入法です。特に、カウンセリングを受けた後の効果維持や、カウンセリングを待つ間の支援として役立つ可能性があります。試験では、社会的および認知機能の改善が見られ、臨床症状の軽減も示されました。しかし、パイロット試験であるため、結果の一般化には注意が必要です。日本の臨床現場での適用には、文化的背景や言語の違いを考慮した適応が必要です。今後の研究で、より大規模な試験が行われ、効果の確認が進むことが期待されます。
(FAQ)
Q. デジタルメンタルヘルス介入とは何ですか?
A. デジタルメンタルヘルス介入は、インターネットやアプリを利用してメンタルヘルスの支援を行う方法です。例えば、オンラインカウンセリングやメンタルヘルスアプリが含まれます。これらは、アクセスのしやすさやプライバシーの確保が利点とされ、特に若者や忙しい人々に適しています。ただし、効果は個人差があり、専門家のサポートが必要な場合もあります。
Q. オンラインソーシャルセラピーはどのように役立ちますか?
A. オンラインソーシャルセラピーは、個別の心理療法コンテンツとオンラインコミュニティを組み合わせた支援方法です。これにより、社会的なつながりを持ちながら、自己改善を図ることができます。特に、対面カウンセリングを受けることが難しい人や、追加のサポートを求める人に適しています。ただし、緊急時には直接の医療機関の受診が必要です。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
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