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(新着論文)うつ病における連続心理療法の効果: セラピスト変更の影響
原題: A randomized controlled trial testing the effects of sequential psychotherapy in depression: Changing therapist, or both therapist and method?
Miggiels M, Ten Klooster P, Beekman A, Bremer S, Dekker J, Van H, van Dijk MK / Journal of affective disorders / 2026 / DOI / PubMed
抄訳:
この研究は、初回の認知行動療法(CBT)または短期力動的支持療法(SPSP)に反応しなかった成人の大うつ病性障害患者に対する連続心理療法の効果を検討しました。オランダの専門精神医療で実施されたランダム化比較試験で、初回16セッションの治療に反応しなかった185名のうち163名が、同じセラピストでの治療継続、セラピストの変更、セラピストと治療法の両方の変更のいずれかに1:1:1でランダムに割り当てられました。すべての参加者には、追加の16セッションが8週間にわたって提供されました。主要なアウトカムは、意図対処集団における抑うつ症状の重症度であり、抑うつ症状目録-自己報告(IDS-SR)を用いて測定されました。すべてのグループで、第二治療フェーズ後に抑うつ症状のわずかながら統計的に有意な減少が見られましたが、3つの治療戦略間で症状の減少、反応、または寛解率に有意差は見られませんでした。初回の非反応後の心理療法の継続は、抑うつ症状のわずかな改善をもたらしますが、セラピストや治療法の変更は追加の利益を提供するわけではなく、結果を妨げることもありませんでした。これらの結果は、すべての非反応者に適した一律の切り替え戦略が存在しないことを示唆しています。
PICO:
- P(対象): 初回の認知行動療法(CBT)または短期力動的支持療法(SPSP)に反応しなかった成人の大うつ病性障害患者
- I(介入): 同じセラピストでの治療継続、セラピストの変更、セラピストと治療法の両方の変更
- C(比較): 治療法やセラピストの変更なし
- O(結果): 抑うつ症状の重症度の変化(IDS-SRによる測定)
一言: この研究は、初回の認知行動療法(CBT)または短期力動的支持療法(SPSP)に反応しなかった成人の大うつ病性障害患者に対する連続心理療法の効果を検討しました。オランダの専門精神医療で実施されたランダム化比較試験で、セラピストの変更や治療法の変更が症状改善に与える影響を評価しました。
確かさ(GRADE): 中等度
理由: この研究はランダム化比較試験であり、結果の信頼性は比較的高いですが、効果の大きさが小さいため、確信度は中程度としています。
研究の信頼性(RoB 2(ランダム化試験)): 低い(大きな問題なし)
- 参加者の割付方法: 低い(大きな問題なし)
- 予定した介入からのずれ: 低い(大きな問題なし)
- アウトカムの欠測: 低い(大きな問題なし)
- 結果の測り方: 低い(大きな問題なし)
- 報告された結果の選び方: 低い(大きな問題なし)
解説: この研究はランダム化比較試験であり、バイアスのリスクは低いと評価されています。したがって、結果は比較的信頼できると考えられます。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
この研究は、初回の心理療法に反応しなかった大うつ病性障害患者に対する連続心理療法の効果を評価しています。結果として、セラピストや治療法の変更が症状改善に大きな影響を与えないことが示されました。これは、治療の継続が重要であることを示唆していますが、特定の変更戦略がすべての患者に適しているわけではないことも示しています。日本の臨床現場においても、患者の個別の状況に応じた柔軟な対応が求められます。治療の選択肢を広げることは重要ですが、患者の反応を見ながら適切な戦略を選択することが必要です。また、治療の継続が症状の改善に寄与する可能性があるため、患者に対して治療を続けることの重要性を説明することが求められます。
(FAQ)
Q. うつ病の治療にはどのような選択肢がありますか?
A. うつ病の治療には、薬物療法と心理療法が一般的です。薬物療法では抗うつ薬が用いられ、心理療法では認知行動療法(CBT)や対人関係療法(IPT)などが行われます。治療の選択は患者の症状や希望に応じて決定されます。治療の効果が見られない場合は、治療法の変更や追加が検討されます。受診の目安は、症状が2週間以上続く場合や日常生活に支障をきたす場合です。
Q. 心理療法の効果はどのくらいで現れますか?
A. 心理療法の効果は個人差がありますが、一般的には数週間から数ヶ月で効果が現れることが多いです。治療の進行は患者の症状や治療への反応により異なります。治療の効果を最大化するためには、セラピストとの信頼関係を築き、治療に積極的に参加することが重要です。治療の効果が感じられない場合は、セラピストと相談し、治療法の見直しを検討することが推奨されます。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
不安や悩みを抱えている方は開院後お気軽にご相談ください。当院スタッフが丁寧にサポートいたします。