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(新着論文)身体活動と感情の関連性:抑うつ症状に関する系統的レビュー

原題: Within-person association between affect and physical activity related to depressive symptomatology: A systematic review and methodological reflections.
Vuuregge AH, Zhang Y, Meulmeester WM, Bockting CL, Lucassen PJ, Heininga VE, Schrantee A, Mul JD / Applied psychology. Health and well-being / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:
身体活動は気分を改善し、抑うつ症状を軽減する可能性があります。本系統的レビューでは、日常生活における身体活動と感情の個人内関連を構造化されたナラティブ合成を用いて要約し、抑うつ症状の程度による違いを検討しました。また、これらの結果に影響を与える可能性のある方法論的選択をレビューし、将来の研究のための方法論的ロードマップを提供します。2024年12月までに、4歳から65歳の個人を対象に、日常の身体活動と感情の個人内関連を調査し、抑うつ症状を評価した研究を系統的にレビューしました。32件の適格な研究が選ばれました。身体活動と同時または後のポジティブな感情との個人内関連が一貫して見られた一方で、ネガティブな感情に関しては結果が混在していました。この関係における抑うつの役割については結論が出ていません。再現性に影響を与える一般的な課題には、測定の信頼性と妥当性の評価が不十分であることや、時間遅延の長さや身体活動のモードなどの関連する(文脈的な)要因のコントロールが不十分であることが含まれます。将来の研究では、研究デザイン、分析、移動評価データの報告に関する新たなベストプラクティスを採用するべきです。このような厳密な研究実践は、これらの関係の理解を強化し、気分や抑うつ症状を改善するためのより効果的で個別化された身体活動介入をさらに情報提供するでしょう。

PECO:

  • P(対象): 4歳から65歳の個人
  • E(暴露): 日常生活における身体活動の実施
  • C(比較): 身体活動を行わないまたは少ない群
  • O(結果): 感情の変化と抑うつ症状の程度

一言: 身体活動は気分を改善し、抑うつ症状を軽減する可能性があります。本研究は、日常生活における身体活動と感情の個人内関連を系統的にレビューし、抑うつ症状の程度による違いを検討しました。また、結果に影響を与える方法論的選択についても考察しています。

確かさ(GRADE): 中等度

理由: 研究数は多いが、結果のばらつきが見られ、特にネガティブな感情に関する結論が不確定です。抑うつの役割についても明確な結論が得られていません。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

本研究は、身体活動が感情に与える影響を抑うつ症状の程度に応じて検討した系統的レビューです。身体活動はポジティブな感情を促進する可能性が示されましたが、ネガティブな感情に関しては結果が混在しています。抑うつ症状の程度がこの関連にどのように影響するかについては、結論が出ていません。日本の臨床現場においても、身体活動は精神的健康の改善に寄与する可能性があるため、個別化された介入の一環として考慮されるべきです。ただし、個々の患者の状態や背景に応じた適切な活動量や種類の選定が重要です。今後の研究では、より厳密なデザインと分析が求められ、特に測定の信頼性と妥当性の向上が必要です。

(FAQ)

Q. 身体活動はどのように精神的健康に影響を与えるのですか?
A. 身体活動は、エンドルフィンの分泌を促進し、ストレスホルモンを減少させることで、気分を改善し、抑うつ症状を軽減する効果があります。日本の健康ガイドラインでも、定期的な運動が推奨されています。ただし、個々の健康状態に応じた活動が必要であり、無理のない範囲で行うことが重要です。異常を感じた場合は医師に相談してください。

Q. 抑うつ症状がある場合、どのような身体活動が適していますか?
A. 抑うつ症状がある場合、ウォーキングやヨガなどの軽度から中程度の運動が推奨されます。これらは心身のリラックスを促し、気分を改善する効果があります。日本の精神科ガイドラインでも、運動療法が補助的治療として推奨されています。ただし、症状が重い場合は医師の指導のもとで行うことが重要です。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料