最新の研究から、外来の皆さまに役立つ知見を簡潔にご紹介します。
(新着論文)ヨガが陸上競技選手のパフォーマンスとメンタルヘルスに与える影響
原題: Effect of yoga on selected performance metrics and mental health of track and field athletes: A systematic review.
Singh D, Kalra S, Mohammad M, Munjal J, Danish M, Ajmera P / Journal of bodywork and movement therapies / 2025 / DOI / PubMed
抄訳:
陸上競技での成功には、身体的および精神的な回復力が求められます。従来のトレーニングは身体の発達に重点を置いていますが、ヨガは身体と精神の両面でのパフォーマンス向上に注目されています。ヨガはポーズ、呼吸、マインドフルネスを組み合わせ、柔軟性、バランス、精神の明晰さ、全体的な健康をサポートします。本レビューは、陸上競技選手におけるヨガのパフォーマンスへの影響を、筋力、バランス、柔軟性、ストレス、不安、全体的なアスリートの生活の質に焦点を当てて評価しました。PRISMAガイドラインに従い、Open Science Frameworkに登録された系統的レビューを実施し、過去10年間の研究を対象としました。ヨガは中程度の筋力向上と柔軟性およびバランスの顕著な改善をもたらし、マインドフルネスを通じてメンタルヘルスをサポートし、不安を軽減しました。生活の質の向上や燃え尽き症候群の軽減を報告する研究もありましたが、ストレスやパフォーマンスへの影響が少ないとする研究もありました。介入は週2〜4回、8〜15週間にわたり実施され、デザインと期間の違いが結果に影響を与えました。ヨガはアスリートの健康とパフォーマンスを向上させる包括的なアプローチを提供しますが、長期的な利益を確認し、介入方法を洗練するためにはさらなる研究が必要です。
PECO:
- P(対象): 陸上競技選手
- E(暴露): ヨガを用いた介入(週2〜4回、8〜15週間)
- C(比較): ヨガを行わない通常のトレーニング
- O(結果): 筋力、柔軟性、バランス、メンタルヘルス、生活の質の変化
一言: 陸上競技選手のパフォーマンス向上には身体的および精神的な回復力が必要です。本研究は、ヨガが選手の柔軟性、バランス、メンタルヘルスに与える影響を評価し、全体的なアスリートの生活の質を向上させる可能性を示しています。
確かさ(GRADE): 中等度
理由: 研究の数が限られており、結果にばらつきがありますが、ヨガの効果を示す証拠はあります。さらなる研究が必要です。
臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)
ヨガは陸上競技選手の身体的および精神的なパフォーマンスを向上させる可能性があります。特に柔軟性、バランス、メンタルヘルスの改善が期待されますが、ストレスやパフォーマンスへの影響は一貫していません。日本の臨床現場でも、ヨガはリハビリテーションやストレス管理の一環として利用されることがあり、アスリートのトレーニングプログラムに組み込むことで、全体的な健康とパフォーマンスの向上が期待されます。しかし、介入のデザインや期間が結果に影響を与えるため、標準化されたプロトコルの確立が求められます。長期的な効果を確認するためには、さらなる研究が必要です。
(FAQ)
Q. ヨガは陸上競技選手にどのような効果がありますか?
A. ヨガは柔軟性やバランスの向上、ストレス軽減に役立つとされています。日本のスポーツ医学ガイドラインでは、ヨガは心身の健康をサポートする手段として推奨されていますが、個々の効果は個人差があります。ヨガを始める際は、専門家の指導のもとで行うことが推奨されます。
Q. ヨガはどのくらいの頻度で行うべきですか?
A. ヨガの頻度は個人の目的や体力に応じて異なりますが、一般的には週に2〜3回が推奨されます。日本の健康増進ガイドラインでは、定期的な運動が心身の健康に寄与するとされています。ヨガを行う際は、無理のない範囲で継続することが重要です。
本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール)
患者さんへのメッセージ
不安や悩みを抱えている方は開院後お気軽にご相談ください。当院スタッフが丁寧にサポートいたします。