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(新着論文)統合失調症、双極性障害、うつ病の環境リスク要因の特異性

原題: Specificity of environmental risk factors for schizophrenia, bipolar disorders, and depressive disorders – umbrella review.
Miettunen J, Ruotsalainen H, Vainio N, AlSaadi H, Jääskeläinen E, Rautio N / Psychological medicine / 2025 / DOI / PubMed

抄訳:
統合失調症、双極性障害、うつ病は、遺伝的および環境的要因に影響される障害であり、これらの疾患に対するリスク要因の特定は、特異的または横断的な介入を行う上で重要です。本研究では、2000年以降に発表された妊娠・出産、幼少期・青年期、ライフスタイル、身体的状態、感染因子、環境曝露に関連するリスク要因のメタアナリシスを体系的に検索しました。70件のメタアナリシスが含まれ、55のリスク要因が少なくとも2つの疾患で研究されました。報告された効果量の74%が統計的に有意であり、特に幼少期の虐待は3つの疾患すべてに共通する強力なリスク要因でした。また、妊娠・出産の合併症は統合失調症のリスクと強く関連し、いくつかの身体的状態はうつ病と関連していました。しかし、多くのメタアナリシスは質が低く、元の研究数が少ないため、より高品質な縦断研究が必要です。

PECO:

  • P(対象): 統合失調症、双極性障害、うつ病の患者
  • E(暴露): 妊娠・出産の合併症、幼少期の虐待、ライフスタイル、身体的状態、感染因子、環境曝露
  • C(比較): これらの要因がない群
  • O(結果): 各疾患の発症リスク、特異性または非特異性の評価

一言: 統合失調症、双極性障害、うつ病は遺伝的および環境的要因に影響される疾患です。本研究は、これらの疾患に関連するリスク要因を体系的にレビューし、特異的または横断的な介入のターゲットを明らかにすることを目的としています。

確かさ(GRADE): 低い
理由: 多くのメタアナリシスが低品質であり、元の研究数が少ないため、結果の信頼性は低いです。より高品質な縦断研究が必要です。

臨床メモ(活用点・注意点・外的妥当性・日本の臨床との整合)

本研究は、統合失調症、双極性障害、うつ病に関連する環境リスク要因を特定し、これらの疾患に対する特異的または横断的な介入の可能性を示唆しています。特に幼少期の虐待は、3つの疾患すべてに共通する強力なリスク要因として確認されました。妊娠・出産の合併症は統合失調症のリスクと強く関連し、いくつかの身体的状態はうつ病と関連していることが示されました。しかし、多くのメタアナリシスが低品質であり、元の研究数が少ないため、これらの結果を臨床に適用する際には注意が必要です。日本の臨床現場においても、これらのリスク要因を考慮した包括的なアプローチが求められますが、さらなる高品質な研究が必要です。

(FAQ)

Q. 統合失調症のリスク要因にはどのようなものがありますか?
A. 統合失調症のリスク要因には、遺伝的要因、妊娠・出産の合併症、幼少期の虐待、ストレス、薬物使用などがあります。これらは日本精神神経学会のガイドラインにも記載されています。リスク要因がある場合でも必ずしも発症するわけではなく、症状が気になる場合は専門医に相談してください。

Q. 双極性障害の予防法はありますか?
A. 双極性障害の予防法として、ストレス管理、規則正しい生活習慣、適切な睡眠、薬物療法の遵守が重要です。これらは日本精神神経学会のガイドラインで推奨されています。

Q. うつ病の環境リスク要因には何がありますか?
A. うつ病の環境リスク要因には、幼少期の虐待、ストレスフルなライフイベント、社会的孤立、身体的健康問題などがあります。これらは日本うつ病学会のガイドラインでも指摘されています。


本記事は一般情報であり、個別の診断・治療を置き換えるものではありません。
精神保健指定医 児玉啓輔(監修者プロフィール

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参考リンク・関連資料