双極性障害
双極性障害(双極性障害I型・II型)は、躁状態または軽躁状態と抑うつ状態が周期的に現れる気分障害です。躁状態では睡眠がほとんど不要にもかかわらずエネルギッシュになり、過度な自信や浪費、性的逸脱行動、無謀な投資など衝動的な行動が増えます。抑うつ期には意欲や興味が極端に低下し、無力感や希死念慮が現れます。これらの波は本人の生活機能や人間関係に大きな影響を与えるため、早期診断と長期的な治療が必要です。
双極性障害(双極性障害I型・II型)は、躁状態または軽躁状態と抑うつ状態が周期的に現れる気分障害です。躁状態では睡眠がほとんど不要にもかかわらずエネルギッシュになり、過度な自信や浪費、性的逸脱行動、無謀な投資など衝動的な行動が増えます。抑うつ期には意欲や興味が極端に低下し、無力感や希死念慮が現れます。これらの波は本人の生活機能や人間関係に大きな影響を与えるため、早期診断と長期的な治療が必要です。
世界では推定1/200人、約3,700万人が双極性障害とともに暮らしており、成人期の働き盛りの世代に多くみられます。多くの患者さんが未診断または誤診を受けており、特に低・中所得国では適切な治療へのアクセスが限られています。偏見や差別は治療や社会参加の障壁となり、雇用や人間関係に影響を及ぼします。だからこそ、疾患に対する理解を深め、早めに専門医に相談することが大切です。
主な症状
躁状態と抑うつ状態では症状が大きく異なります。以下は代表的な特徴です。
- 躁状態・軽躁状態:睡眠欲求の減少、過剰な自尊心や誇大な考え、アイデアが次々と浮かび話し続ける、多弁で気分が爽快または怒りっぽくなる、注意散漫、危険な快楽追求(浪費、無謀な運転、性的逸脱)など。
- 抑うつ状態:抑うつ気分や興味の喪失、疲労感、食欲や体重の変化、眠れないまたは寝すぎる、自己評価の低下、集中力の低下、希死念慮など。
- その他の症状:躁状態では現実とかけ離れた誇大妄想や被害妄想、過度なイライラがみられることがあり、抑うつ期には過剰な罪悪感や未来への絶望感、自殺念慮が出現することもあります。
同じ双極性障害でも、I型は明確な躁状態と抑うつ状態を経験するのに対し、II型では軽躁状態と抑うつ状態が反復し、完全な躁状態は認めません。軽躁状態では症状が比較的軽く、一見調子が良く見えるため見過ごされやすい点に注意が必要です。
原因・リスク要因
正確な原因は不明ですが、双極性障害は遺伝的要因や脳内神経伝達物質のバランス異常に加え、心理社会的ストレスや環境要因など複数の要素が関与して発症すると考えられています。近親者に同じ疾患を持つ人がいる場合はリスクが高く、発症年齢は10代後半から30代前半に多いと言われます。暴力や虐待、親しい人の死別や離婚などの重大なライフイベント、アルコールや薬物の乱用がきっかけで症状が誘発・悪化することがあります。一方で、仕事や学業など日常生活の活動はストレス源となり得る一方で、適切な支援がある場合は自尊心や生活リズムを保つための保護因子になると報告されています。
治療法
治療の目的は、躁とうつのエピソードの頻度と重症度を減らし、日常生活の機能を維持することです。双極性障害は再発しやすい病気のため、長期的に医師との連携を続けながら、症状の変化に応じて治療内容を調整していきます。薬物療法と精神療法を組み合わせ、本人や家族が治療決定に主体的に関わることが効果的とされています。
薬物療法
第一選択は気分安定薬です。代表的なリチウム製剤は躁・抑うつエピソードの両方を抑え、再発を予防しますが、治療域と中毒域が近いため定期的な血中濃度測定が必須です。手の震えや甲状腺機能低下、腎機能障害などの副作用に注意し、妊娠中や授乳期には他剤への切り替えを検討します。バルプロ酸やカルバマゼピンなどの抗てんかん薬も急性躁状態や混合状態で有効ですが、バルプロ酸は妊娠中および妊娠可能な女性では使用すべきでないとされています。非定型抗精神病薬(クエチアピン、ラモトリギンなど)は気分安定作用をもち、気分安定薬と併用して効果を高めます。抗うつ薬は抑うつエピソードで用いることがありますが、躁転を引き起こすリスクがあるため必ず気分安定薬または抗精神病薬と併用し、単剤投与は避けます。
薬物療法の副作用には眠気や筋肉のこわばり、体重増加や代謝異常が含まれ、服薬継続の妨げになることがあります。完全寛解後も最低6か月は気分安定薬や抗精神病薬の維持療法を続けることが推奨されており、多数のエピソードを経験した場合はより長期の治療が必要になることもあります。薬物療法は精神療法や生活指導と併用し、定期的な血液検査や副作用モニタリングを行いながらバランスを取ることが大切です。
精神療法・生活リズム療法
薬物療法に加えて心理教育や認知行動療法、対人関係および社会リズム療法などの精神療法が効果的です。これらのアプローチは、自身の気分の波を早期に察知し、ストレスや生活習慣のコントロール方法を学ぶことで再発を予防します。規則正しい睡眠・食事・運動など生活リズムを安定させることが再発予防の鍵であり、心理社会的サポートが雇用や社会参加の維持にも役立ちます。
セルフケア・サポート
家族や友人による支えは治療継続や社会参加を促進し、孤立を防ぎます。服薬を自己判断で中断すると症状が悪化しやすいので、医師の指示に従って継続することが重要です。飲酒や喫煙、薬物の乱用は気分の波を悪化させ、身体疾患のリスクも高めるため控えましょう。日々のセルフケアとしては、規則正しい睡眠と食事、適度な運動を習慣化し、ストレス管理のためのリラクゼーション法や対人関係の調整を行います。再燃兆候(寝なくても平気、買い物やSNS利用が増える、気分の落ち込みなど)に早めに気付くために、家族とともにチェックリストを作成すると効果的です。双極性障害のある人は心血管や呼吸器疾患など身体疾患の合併が多く、平均寿命が一般の人より13年短いと報告されています。健康診断や運動習慣を欠かさず、長期的な健康管理にも目を向けましょう。
