強迫性障害
強迫性障害(OCD)は、強迫観念と強迫行為によって特徴付けられる精神疾患です。強迫観念とは不合理だと分かっていても繰り返し頭に浮かんでしまう思考やイメージ(例:汚染への恐怖、災害や加害を起こす不安、対称性へのこだわり、禁忌的な性的・攻撃的な思考)であり、強迫行為はその不安を打ち消すために行う儀式的な行動(過度な手洗い、鍵やガス栓の確認を何度も繰り返す、一定の順序で物を並べ直す、数を数え続ける等)です。これらの行為は一時的に安心感をもたらしますが、すぐに不安が戻るため頻度や時間が増え、生活に支障をきたします。
原因
原因は完全には解明されていませんが、遺伝的素因や脳内セロトニン系の機能不全、幼少期の経験や性格傾向などが複合的に関与すると考えられています。ストレスや疲労、睡眠不足は症状を悪化させることがあります。
治療法
認知行動療法
治療の第一選択は認知行動療法(CBT)の一種である曝露反応妨害法(ERP)です。不安を引き起こす状況に徐々に直面し、儀式的な行為をあえて我慢することで、不安が自然に弱まることを体験的に学びます。ERPは医療機関でのセッションに加え、自宅での課題実践が重要です。考え方の偏りを修正し、柔軟な思考と行動を身に付けることで再発予防にもつながります。
薬物療法
曝露反応妨害法に加えて薬物療法が行われることがあります。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)はOCDに対する第一選択薬であり、不安や強迫観念を軽減しますが、効果が現れるまでに数週間から数ヶ月かかり、うつ病よりもやや高用量で長期的に服用する必要があります。副作用として吐き気、頭痛、不眠、胃腸症状などがありますが、多くは数週間で軽減します。効果が不十分な場合には少量の抗精神病薬を併用したり、重症例では反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)など新しい治療法が検討されます。
セルフケア・サポート
治療は長期にわたることが多いため、自分を責めず継続する姿勢が大切です。十分な睡眠とバランスの良い食事、適度な運動など基本的な生活リズムを整え、ストレスや疲労をためないよう心がけましょう。家族や友人に病気について理解してもらい、安心して治療に取り組める環境を作ることも回復を助けます。症状がつらくなったときは一人で抱え込まず、医療機関に早めに相談してください。
