成人ADHD(注意欠如・多動症)

当院は、成人(18歳以上)のADHD(注意欠如・多動症)の診断・治療に対応する予定です(2027年4月開院予定)。「うっかりミスが多い」「締め切りに間に合わない」「気が散って仕事が進まない」——こうした困りごとは、本人の努力不足や性格の問題と誤解されがちですが、その背景に発達特性が隠れていることがあります。当院は、働く世代の方が「早くつながり、自分の特性を理解しながら治療を進められる」ことを大切にしています。問診に加えて心理検査を用い、医師が総合的に診断を行い、お一人おひとりの状態に合わせて治療方針をご一緒に決めていきます(共同意思決定/SDM)。

このページでは、成人ADHDの現れ方、診断の進め方、薬物療法と環境調整を組み合わせた治療についてご説明します。ADHDは発達障害全般のひとつであり、より広い解説は発達障害全般のページを、お子さんのADHDについては小児ADHDのページもあわせてご覧ください。

当院は成人のADHDの診断・治療に対応します

当院では、精神科専門医・精神保健指定医である院長が、成人ADHDの診断と治療を担当する予定です(当院は2027年4月開院予定です)。ADHDの治療は「お薬による治療」と「お薬以外の支援(環境調整や考え方・行動の工夫)」を組み合わせて行うものとされており、当院ではどちらかに偏ることなく、ご本人の状態とご希望をうかがいながら方針を組み立てます。

院長は、ADHD治療に用いられる中枢神経刺激薬であるコンサータ・ビバンセの処方資格を持つ登録医です(後述のとおり、これらのお薬の処方には国の管理システムへの登録が必要です)。当院の方針として、根拠のある単剤での調整を基本とし、必要のない多くの種類の薬を重ねることは避けるよう努めています。診断や治療方針についても、ご本人が理解し納得して選べるよう、わかりやすくご説明することを心がけています。院長の経歴・資格については院長プロフィールをご覧ください。

成人ADHDとは(仕事・生活での現れ方)

ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意多動性・衝動性が、年齢や発達の程度から考えて目立つ形で続き、生活や仕事に支障をきたす神経発達症のひとつとされています(DSM-5-TR, 2022)。大人の場合、子どもの頃に目立った「動き回る」多動よりも、仕事や日常生活の段取りに関わる困りごととして現れやすいとされています。

仕事・生活の場面では、たとえば次のような形で現れることがあるとされています(DSM-5-TR, 2022)。

  • 不注意の例:仕事でケアレスミス(うっかりした間違い)をしやすい、課題や活動の段取りが難しい、報告書の作成や書類の記入・長い文章の見直しなど集中を要する作業を後回しにしがち、約束や支払い・電話の折り返しを忘れやすい、鍵・財布・書類・スマートフォンなどをなくしやすい、まわりの刺激で気が散りやすい。
  • 多動性・衝動性の例:大人では、外から見える落ち着きのなさよりも「内側のそわそわ感」として感じられることがある、順番を待つのが苦手、相手の話が終わる前に答えてしまう、人の会話や作業に割り込んでしまう。

公的な医療機関の解説では、大人のADHDは「集中できない」というより、関心を持てない作業にはなかなか取りかかれない一方、興味のあることには没頭できるという集中の偏りが課題になりやすいとされています。また、締め切りを守れない・時間の管理が苦手といった「先延ばし」も、不注意の症状に対応するとされています(DSM-5-TR, 2022/東京都立病院機構)。

大人になって気づくADHD・診断の実際

ADHDは生まれつきの特性であり、大人になってから突然始まるものではないとされています。子どもの頃には目立たなかった特性が、進学や就職などの環境の変化やストレスによって表面化し、「生きづらさ」として自覚されることがあるとされています(東京都立病院機構)。学生時代は時間割や周囲のサポートに支えられていたものが、就職後に責任や複数の業務の同時進行が求められることで、特性と環境のミスマッチが目立つようになる、という背景が指摘されています。

診断は、国際的な診断基準であるDSM-5-TRに沿って、医師が問診や経過をふまえて行います。成人での主な要件は次のとおりとされています(DSM-5-TR, 2022)。

  • 17歳以上の場合、不注意・多動性衝動性のいずれかの群で5項目以上の症状が該当すること(子どもは各群6項目以上)。
  • いくつかの症状が12歳になる前から存在していたこと。
  • 症状が家庭・職場など2つ以上の状況で認められること。
  • 症状が少なくとも6か月間続いていること。
  • 社会的・職業的な機能に明らかな支障が出ており、他の精神疾患ではうまく説明できないこと。

「子どもの頃の様子がよく分からない」という場合でも、当時の通知表や、ご家族からうかがえる情報などが手がかりになることがあります。受診の際に思い出せる範囲で振り返っていただけると、診断の助けになります。

当院での診断の進め方(問診+心理検査+併存の評価)

当院では、ADHDの診断を次のような流れで進めます。

  • 問診(診察):現在の困りごと、子どもの頃からの経過(成育歴)、仕事や生活の状況、これまでの受診歴などをていねいにうかがいます。
  • 心理検査(補助):ご本人の状態に応じて、成人のADHD症状の程度を評価するCAARS(コナーズ成人ADHD評価スケール/Conners' Adult ADHD Rating Scales)日本語版などを用いることがあります。CAARSは18歳以上を対象とし、自己記入式と観察者評価式があり、注意・多動性・衝動性・自己概念などの側面を評価するものとされています。必要に応じて、認知の得意・不得意を客観的に把握するためにWAIS-IV(成人用知能検査)を行うこともあります。
  • 併存の評価:うつ・不安・適応障害など、一緒に起きていることのある状態についても評価します。

大切な点として、これらの心理検査はいずれも診断を補助するためのものであり、検査の数値だけでADHDが確定するわけではありません。WAIS-IV自体もADHDを診断するための検査ではないとされています。確定診断は、医師が問診・成育歴・経過・複数の情報源を総合的にふまえて行います。心理検査は当院で実施する予定です。心理検査には保険診療で行うものと自費となるものがあり、内容・費用・所要時間は心理検査・カウンセリングのページでご案内します。

治療(薬物療法・環境調整・心理的支援)

成人ADHDの治療は、お薬による治療お薬以外の支援(環境調整や行動の工夫など)の二本柱で組み立てるものとされています。診断後すぐにお薬を使うとは限らず、まず環境調整から始めることもあります。たとえば、作業を小さく分ける、優先順位を整理する、メモやリマインダーなどの外部ツールを活用するといった、「努力ではなく仕組みで支える」工夫が役立つことがあるとされています(東京都立病院機構)。当院では、ご本人が自分の特性を理解し、具体的な対処法を身につけていけるよう、必要に応じて心理的な支援も組み合わせます。

日本で成人のADHDに承認されている主なお薬には、次のものがあります。当院では、根拠のある単剤での調整を基本とし、ご本人とご相談しながら選択します。

  • コンサータ(メチルフェニデート徐放錠):中枢神経刺激薬で、6歳以上の小児と18歳以上の成人のADHDに承認されています。処方には国のADHD適正流通管理システム(登録医制度)への登録が必要なお薬です。当院の院長は登録医です。
  • ストラテラ(アトモキセチン):非刺激薬で、6歳以上の小児と18歳以上の成人のADHDに承認されています。登録医制度の対象外で、一般の医師が処方できるお薬です。
  • インチュニブ(グアンファシン徐放錠):非刺激薬で、6歳以上の小児と18歳以上の成人のADHDに承認されています。こちらも登録医制度の対象外です。

ビバンセ(リスデキサンフェタミン)について:当院の院長は、コンサータと同様にビバンセの処方資格を持つ登録医です。ただし、ビバンセは日本では効能・効果が「小児期における注意欠如・多動症(AD/HD)」と定められており、18歳以上で新たに開始する適応はありません(18歳未満で開始した小児期発症の方が18歳以降も継続して使用する場合の規定のみが定められています)。そのため、成人になってから初めてADHDの診断を受けた方に対してビバンセを新たに開始することはできません。この点は、成人にも使えるコンサータ・ストラテラ・インチュニブと大きく異なります。

主な副作用はお薬の種類によって異なります。コンサータなどの中枢神経刺激薬では食欲の低下・不眠・動悸(心拍数の増加)などが、ストラテラ・インチュニブなどの非刺激薬では眠気・口の渇き・血圧の低下や脈の遅れなどが知られています。いずれのお薬も、定期的に経過を確認しながら、医師が一人ひとりの状態に合わせて使用の可否や量を判断します。お薬は、ご本人が自分の特性を理解して対処法を学ぶ支援と組み合わせて行う選択肢のひとつと位置づけられています。詳しい効果や副作用は、診察時に医師がご説明します。

併存するうつ・適応障害・不安症との関係

成人ADHDでは、ほかの精神的な不調が一緒にみられることが少なくないとされています。海外の系統的レビューでは、成人ADHDの方の多くが少なくともひとつの併存する状態を抱えていると報告されており、不安症・うつ病などが代表的とされています(PLOS One, 2022/Frontiers in Psychiatry, 2025。これらは国際的な研究に基づく推計です)。

働く世代では、ADHDそのものよりも先に、うつ状態・適応障害・不安といった「目の前の困りごと」で受診され、後から背景にADHDがあると気づかれることもあります。公的医療機関は、ADHDの特性による失敗体験の積み重ねが、二次的に「自分はダメだ」という思い込みや、うつ・不安につながることがあると説明しています(東京都立病院機構)。未診断のADHDが背景にあると、抑うつや不安が長引いたり繰り返したりすることがあるため、背景の特性を評価することが支援の手がかりになるとされています。

当院では、こうした併存する状態も同じ院内で評価・治療する予定です。うつ・適応障害についてはうつ病のページ、職場のストレスによる適応障害については職場のストレス・適応障害のページもあわせてご覧ください。

復職支援との連携と、今後の専門プログラム(提供時期は未定)

ADHDの特性により仕事の負担が大きくなり、うつや適応障害で休職に至る方もいらっしゃいます。当院では、休職・復職を目指す方への支援と連携しながら、特性に合わせた働き方の工夫や、必要に応じた職場での合理的配慮についても一緒に考えていきます。復職支援の内容については休職・復職支援のページをご覧ください。

また、当院では将来的に、リワーク(復職支援プログラム)や、発達障害のある方を対象とした専門プログラムをショートケアの形で実施することを検討しています。ただし、これらのプログラムの提供時期は未定です。開始が決まりましたら、あらためてご案内いたします。現時点では、外来での診療・心理検査・カウンセリングを中心に支援を行います。

受診の流れ

「もしかしてADHDかもしれない」と感じている方も、まずはご相談ください。受診の際は、現在の困りごとに加えて、子どもの頃からの様子(思い出せる範囲で結構です)を振り返っていただけると、診断の助けになります。当時の通知表やご家族からうかがえる情報があれば参考になります。

当院では、問診と心理検査を組み合わせ、医師が総合的に診断を行います。診断や治療方針については、ご本人が理解・納得して選べるよう、わかりやすくご説明したうえでご一緒に決めていきます。お薬を使う場合も、お薬以外の工夫と組み合わせながら、無理のない形で進めていきましょう。CAARSやWAIS-IVなどの心理検査は当院で実施する予定です。心理検査には保険診療で行うものと自費となるものがあり、くわしくは心理検査・カウンセリングのページでご案内します。

よくある質問

仕事を続けながら通院できますか?

お仕事を続けながら通院していただけるよう、平日に通いやすい体制を整えます。当院は、必要なときになるべく早くご相談いただける医療を大切にしています。診断や治療の進め方は、ご本人のお仕事の状況やご希望をうかがいながら、ご一緒に決めていきます(共同意思決定/SDM)。困りごとの程度によっては休養が望ましい場合もありますので、その点も診察のなかで一緒に考えていきましょう。

ADHDの薬は一生飲み続けないといけませんか?

ADHDのお薬は、生活や仕事のしづらさをやわらげるために使うもので、必ずしも一生続けるものとは限りません。環境調整や工夫が身についてきた段階で、医師と相談しながらお薬の量や継続を見直していくこともあります。当院では根拠のある単剤での調整を基本とし、定期的に経過を確認しながら、お一人おひとりの状態に合わせて判断していきます。効果や続け方には個人差があるため、ご不安な点は診察時にご相談ください。

薬を飲み始めて副作用が気になるときはどうすればよいですか?

食欲の低下や不眠、眠気など、気になる変化があれば、自己判断で中止せず、まずご相談いただくことをおすすめします。お薬の量やタイミングの調整、別の選択肢への変更など、状態に合わせて医師が一緒に検討します。お薬は工夫や支援と組み合わせて使う選択肢のひとつですので、無理のない形で進めていけるよう一緒に考えていきましょう。

家族としてどのように接すればよいですか?

ADHDの特性による段取りの難しさやうっかりは、本人の努力不足や性格の問題ではないとされています。叱責よりも、メモやリマインダーなど「仕組みで支える」工夫を一緒に考えていただけると役立つことがあります。ご家族から見た子どもの頃からの様子は診断の手がかりにもなりますので、よろしければ受診に付き添っていただくことも歓迎します。

参考文献

  • American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR). 2022.
  • 東京都立病院機構「大人のADHDとは?」 https://www.tmhp.jp/kikou/iryokenkou/minnanoiryokenkou_column_aboutadhd.html
  • 注意欠如・多動症―ADHD―の診断・治療ガイドライン 第5版(ADHDの診断・治療指針に関する研究会/齊藤万比古・飯田順三 編、じほう、2022年)
  • 千葉テストセンター「CAARS日本語版(Conners' Adult ADHD Rating Scales)」 https://www.chibatc.co.jp/
  • The prevalence of psychiatric comorbidities in adult ADHD: a systematic literature review. PLOS One. 2022. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0277175
  • Adult ADHD and comorbid anxiety and depressive disorders: a review. Frontiers in Psychiatry. 2025. https://www.frontiersin.org/journals/psychiatry/articles/10.3389/fpsyt.2025.1597559/full
  • メチルフェニデート塩酸塩徐放錠(コンサータ)/リスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセ)/アトモキセチン塩酸塩(ストラテラ)/グアンファシン塩酸塩徐放錠(インチュニブ)各添付文書(PMDA 医療用医薬品情報、2024〜2025年改訂)

本ページの医療情報は、当院院長(日本専門医機構認定 精神科専門医・精神保健指定医)の監修のもと作成しています。記載は一般的な情報の提供を目的としたもので、診断・治療はお一人おひとりの状態に応じて医師が判断します。